リサイクルフロー(1)ボトルtoボトルの流れ
石油由来のものと同等の原料となり、透明できれいなボトルに

 化学分解法は、PETボトルを化学的に分解してPET原料に戻し、再びPET樹脂を作る方法です。
 この方法は、メチルアルコール、エチレングリコール、水等を用いてPETボトルを化学的に分解し、分解した成分を蒸留や吸着によって精製したのち、再びPETを作る方法です。

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 化学分解法の実例として帝人ファイバー(株)の化学分解プロセスについて紹介します。
 この工場では回収ボトルを化学的に分解して、DMT(テレフタル酸ジメチル)とEG(エチレングリコール)という物質として精製し、DMTをさらにボトル用PET樹脂の原料である精製TPA(テレフタル酸)とするものです。
 作られたTPAを同工場内の重合プラントでボトル用PET樹脂にすることで、再びボトルに生まれ変わります。
 同社の化学分解法の利点は、回収ボトルを分子レベルに分解し精製することにより、石油から製造するPET樹脂原料とまったく同等の高純度原料が得られるようになるところにあります。
 この原料から作られるPETボトルも、現在流通されているものと同様、清涼飲料、しょうゆ、酒類、乳飲料等の用途にも対応でき、かつ品質のまったく変わらない、透明できれいなボトルになります。


処理能力は2003年度62千トン、2004年度は約90千トンに増加

 帝人ファイバー(株)の化学分解法の処理能力は、2002年度に年間30千トンで始まり、繊維用のPET樹脂を作るのに使用されました。その後2003年11月には年間62千トンの処理能力に拡張され、食品ボトル(主に飲料)用のPET樹脂を生産するのに使用され始めました。
 2004年からは、さらに別の化学分解法の工場も立ち上がります。(株)ペットリバースは回収ボトルをEG(エチレングリコール)で分解し、精製したのちPET樹脂にする方法により、年間27.5千トンの処理能力で食品容器包装用のPET樹脂を生産するといわれています。これを合わせると化学分解法の処理能力は年間約90千トンになります。


安全衛生性も確保し、ボトルtoボトルが本格的に実用化

 化学分解法によるリサイクルのPETボトルの安全衛生性については、2000年度の厚生科学研究※14において、食品衛生上の安全性の面で何ら問題がないと判断されています。
 しかし、ボトルtoボトルはこれまでにない新しい取り組みであることから、推進協議会ではさらに慎重を期すために、国内外の安全衛生性の基準や評価方法等を研究してきました。
 帝人ファイバー(株)のボトルtoボトルについても推進協議会の調査・検討をもとにした厳しい安全衛生性評価を進め、国内外の法律・基準に適合すること、官能試験により充填した食品の味も従来品と変わらないことが確認されました。それらの検討結果は、内閣府食品安全委員会の食品健康影響評価にも提出され、2004年3月に『現在のPETと同じ用途内において、食品に直接接触する容器包装として使用することは可能であると判断した』という審議結果が報告されました。
 このように安全衛生性について公的に報告書が出されたことを受け、2004年4月からボトルtoボトルの実用化が始まりました。このリサイクルPETボトルは、現在さまざまな飲料が充填されて店頭に並んでいます。

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 ボトルtoボトルは、天然資源を採掘する必要がないことで省資源に貢献しています。これをLCI(ライフサイクルインベントリー)の手法で計算すると、下表の通りボトルtoボトルのPET樹脂を製造する際の工程エネルギーは、石油由来のボトル用PET樹脂の工程エネルギーと同等であり、エネルギー負荷合計は約半分に抑えられると証明されました。※15※16
 従来のマテリアルリサイクルに新しくボトルtoボトルも加わったことで、PETボトルのリサイクルが今まで以上に強固なものになりました。

※14 厚生科学研究(現・厚生労働科学研究):
適切な科学的根拠に立脚した厚生労働行政施策を行うため、産官学の各分野が協力して行う研究であり、厚生労働省が補助金を出しています。厚生科学審議会で決定された課題に対して公募により研究チームが選択されます。
本文の研究は『食品包装等関連化学物質の安全性確保に関する調査研究』の題で報告、公表されています。
※15 『PETボトルのLCIデータ調査報告書』 2004年8月(PETボトル協議会)
※16 『プラスチック廃棄物の処理・処方に関するLCA調査研究報告書』
2001年3月〈(社)プラスチック処理促進協会〉

表6LCI によるエネルギー負荷比較
  ボトルtoボトルPET樹脂 石油由来PET樹脂
資源エネルギー 0(MJ/kg) 35(MJ/kg)
工程エネルギー 31(MJ/kg) 28(MJ/kg)
エネルギー負荷合計 31(MJ/kg) 63(MJ/kg)
(出所) 『PETボトルのLCIデータ調査報告書』2004年8月(PETボトル協議会)
『プラスチック廃棄物の処理・処方に関するLCA調査研究報告書』
2001年3月〈(社)プラスチック処理促進協会〉


※17 TPA:テレフタル酸
※18 BHET:ビスヒドロキシエチルテレフタレート
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●PETボトルリサイクル年次報告書