RING PETBOTTLE RECYCLING
対談 3R新時代の展望 循環型社会形成に向けて〜PETボトルと3R〜
 
3R推進マイスターとしての活動
辰巳 菊子
公文 本日は、3R推進マイスターとして活動されている、辰巳菊子さんにお越しいただき、PETボトルリサイクル推進協議会の服部政夫会長と、いろいろお話を伺っていきたいと思います。よろしくお願いいたします。まずは辰巳さんから環境省の3R推進マイスターに就任して以来どういった活動に取り組んでこられたか、お話いただきたいと思います。

辰巳 3R推進マイスターとしての2008年度の活動は、東京都中央区や千葉市などの環境関連部門からの講演依頼や、食品産業センターのシンポジウムのコーディネーターなどです。
 中央区の場合は、地域でリサイクルに取り組んでおられるNGOや商店街の方がたに、毎年、賞を差し上げている表彰式で、記念講演という形で講演させていただき、100名程の参加でした。千葉市の場合は、ごみ減量推進員の人たちに対する定期的な研修会で、400名以上参加され大きな会場が満杯になりました。

公文 ご講演はどんな内容でされたのでしょうか。

辰巳 私の場合、どうすれば持続可能な暮らしができるのかをみんなで考えましょうという話が主です。消費者の社会における大事な役割は、商品やサービスを購入することであり、そのときに、環境についても考えることが持続可能な暮らしにつながるのですという話です。
 いわゆるグリーン購入とかグリーンコンシューマーといわれる話です。地方自治体からは、ごみの分別やリサイクルなど、具体的な話を希望される場合が多いのですが、なんと言っても買うときが大事であり、中身だけではなく、使ったらすぐごみになる容器を減らすことをちゃんと考えて商品を選びましょうというところに軸足を置いています。
買うときから始まるエコ
服部 政夫
公文 「買うときから始まるエコ」というグリーン購入ネットワークの標語がありましたね。

辰巳 多くの消費者にとって入りやすいのは、やっぱり目の前に見えるごみの問題ですよね。何でこんなにごみが出るのか、どうしたら減るのか? ごみだけ見ていたらだめで、入口をきちんと閉めないと出口はどうにもならないのです。入口、つまり買うところが大事なのだということをずっと言い続けています。3R推進マイスターといわれても、そこのスタンスは変えられないということです。

公文 「リシンク(Rethink)」ですね。買うときに、本当に要るのかもう一度考えよう、ということですよね。

辰巳 そうです。「リシンク」って、とてもいいかもしれないですね。立ちどまってもう一度考えましょうというお話ならば大賛成です。

服部 そのときのポイントは何でしょうか。

辰巳 いまNACS環境委員会では、「商品の一生を知って選択しましょう、それが消費者の社会的責任です」と訴えているところです。企業の社会的責任(CSR)はもう当たり前ですからね。
 今話題のカーボンフットプリントの話は、消費者が商品の一生を考えるとてもいい機会だと思います。ただ、CO2の排出量だけを示しますので、資源など見えない面もあり、まずは、商品の一生が見える表示への入口かなと思っています。また、PETボトル飲料1つをとっても、事業者の方たちの、容器の資源使用量の削減やリサイクルの提言など、とても進んだ環境配慮に取り組まれていますし、評価もしています。だからこそ、購入者も全体量を減らすことについても、もう少し考えるべきではないかと思います。

服部 企業からの情報がまだまだ少ないということになるわけですね。

辰巳 そうですね。でも買う量を減らしましょうとは言いにくいですね。

公文 PETボトルの場合は、原料からのトレーサビリティーが比較的容易に把握できますよね。

服部 容易ですね。PETボトルの場合でいえば、原料はどこでつくられて、PETボトルメーカーはどこから原料を調達しているか、といったことはもう全部わかります。単一素材製品ですから、そういう点では非常に安心ですね。
 つまり、PETボトルは、製品自体も透明ですが、トレーサビリティーも透明で非常にいい容器であるということになります。ただし、先ほどお話に出ましたカーボンフットプリントについて申し上げると、PETボトル飲料は流通が複雑で多彩な分野で販売されるだけに、対応が簡単ではありません。
消費者の声は「もったいない」という気持ち
公文 正人[司会]
公文 話は変わりますが、消費者の方からいろいろな相談、問い合わせがあると思いますが、特にPETボトルと3Rについてはどうでしょうか。

辰巳 多くの市民にしてみれば、中の水を一回飲むだけで、こんなきれいなPETボトルを廃棄するのはもったいないという感覚のようですね。かといって、さっきの話のように、買うのを「リシンク」するかといったら、決してそうではなくて、のどが渇いたら我慢もできないし、買ってしまうというのが実情です。そこで自治体から、きれいに洗って、ラベルをはがして、キャップをとってリサイクルに出しましょうといわれれば、かなりの率で市民はそれには協力しているという気がします。その根本は単純にもったいないという気持ちではないでしょうか。そういう意味の消費者の協力というのはすごく大きいのではないかと思います。
環境ラベル等での情報発信
服部 辰巳さんは、環境ラベルについても熱心に取り組んでいらっしゃると聞いています。カーボンフットプリントもその一部だと思いますが、もっとほかの視点からとらえていく必要があると思います。環境ラベルといってもいろいろ中身があるわけですよね。

辰巳 環境ラベルについては事業者が自分で自己評価をして出すケースが最初の入口としてあります。また、第三者認証のエコマークの他、多種多様なマークがあります。しかし大切なことは、ある面だけ見てよいとか、よくないとか、決め付けることではなくて、もう少し総合的に見て評価していくべきだろうと思います。

服部 あとは、消費者がそれを見て、どれだけ購入の選択の基準にするかということですね。その辺が一番難しいところかと思います。例えば、AとBがあって、環境的にはAがいい、ただ、Bのほうがおいしい、といったときにどっちを選ぶか、非常に難しいところだと思います。

辰巳 そうですね。そういう意味では最初から環境ラベルには限度があります。消費者は当然、品質や安全性を重んじます。しかし、環境面にも目が向いていることは事実で、第三者認証の新しいラベルなども数々登場しています。

公文 このままいくとどんな表示がつくことになるんでしょうね。今、原料原産地表示も厚生労働省、農林水産省で進めていますけれども、すごいですよ。

辰巳 表示があふれ、消費者はどれを見たらいいのかわからなくなるので、やっぱりトータルに評価された、いいものがあったらいいと思いますが、これは難しいですね。
対談写真
感動させてくださるというのが重要だと思います
公文 環境ラベル等で情報発信することの必要性はよくわかります。しかし、一定のスペースに表示できるものには限界があります。情報発信のツールとしては何が望ましいでしょうね。

辰巳 今、環境にはみなさん関心がありますので、どこかの場でこれはすごいなと感動してもらうことがとても重要じゃないでしょうか。それには口コミが大きいですね。例えば「 1L for 10L」の話とか、あるいはキャップを集めてワクチンを、といった話などは明らかに口コミによるものですよね。心を動かすと口コミはすごく広がるんです。

服部 心を動かすスタートをどこに置くかですね。

辰巳 PETボトルに関しては、かなりのことをやっておられるし、素晴らしいと思っています。ラベルの幅だってすごく小さく、しかもとても取りやすくなったし、単一素材で有利だということもありますが、完璧にリサイクルされていますしね。国内でその優れた技術をフルに使うよう、PETボトルリサイクル推進協議会さんとしては発信していくべきだと思います。
PETボトルのきめ細やかな努力にびっくり
対談写真
公文 この辺で、3Rの推進活動のポイントについて服部会長からご説明いただきたいと思います。

服部 PETボトルリサイクル推進協議会では2006年に、3R推進に向けた自主行動計画を取りまとめ、現在はその計画に沿ってさまざまな活動を展開しているところです。
 まずリデュースについては、2010年までに、主な容器サイズと用途ごとにPETボトル重量を原単位で2004年度対比3%削減するという目標を立てまして、2007年度では15品目中8品目で0.9〜10%削減でき、そのうち5品目で目標である3%軽量化を達成することができました。
 軽量化が進んでいない容器というのは、主に、炭酸を入れている耐圧ボトル、それから、みりんと4Lの焼酎の容器、1Lのしょうゆの容器ですが、それらの容器というのはもともと、PETボトルが出始めてからしばらくたって、コストダウンという観点から軽量化が進められていたので、ある限界まできています。20年間に大体20〜35%ぐらいの軽量化はもう過去にされています。ですから、さらに3%軽量化をするというのは、非常に厳しい目標なのです。

辰巳 基準の2004年度以前に、もう取り組んでいたということですね。

服部 そうです。なぜ耐圧ボトルはこれ以上軽量化できないのかというと、容器というものはもともと中身を保護する役目を持っていて、一定期間、味を変えないことが最も重要な目的なわけです。炭酸容器であれば、炭酸が抜けないようにしなければなりません。軽量化によって中身の味が変わることになると役目を果していません。
 また、中身を詰めて輸送する際には、当然何段も積みますから、そのときの荷重にも耐えなければなりません。そうしたさまざまな条件をクリアしてなお軽量化できる限界がどこにあるかを、いろいろ模索しているところです。例えば、PETボトルの口元の「ネックリング」と呼ばれている上部のねじ部は21mmの高さになっています。

辰巳 それは規格なのですか。

服部 そうです。そして、重量は6.6g。このうちのねじ部を17mmぐらいに低くすれば重量を1.5g減らせます。キャップも当然低くなりますから、それで0.5g減らせます。トータルすると2g軽くなる。500mlの耐熱ボトルの場合26gか28gですので、6%ぐらいは軽量化になるのです。

辰巳 本体のところをさわらないで、キャップだけでも軽量化は図れるということですか。

服部 そうですね。本体はもう減らせませんから。

辰巳 確かに、ネジ山の低いキャップが最近あるなという気がしていましたが、そういうことなのですね。

服部  「ショートハイト」と呼んでいます。

辰巳 私たちは、皆さんがそういう涙ぐましい工夫や努力を重ねておられることは知りませんね。

服部 リデュースは、容器メーカーだけではなく、中身メーカーとも一緒にやっていかないと実現いたしません。ただ単に軽量化するだけだとケースにして積み上げたりできなくなります。そこで中身を窒素充填して中から圧力をかけ、開栓されるまではきちんと形状が維持されているようにしているのです。この辺は容器メーカーと中身充填事業者が連携しないとできません。

公文 そうですね。中身によってもできるものとできないものがありますからね。

辰巳 素晴らしいですね。本当にきめ細やかにやっておられることにびっくりしました。

服部 いろいろ努力はしているわけです。一方、リユースですが、環境省のリターナブル研究会に参画して、国内外のリユースの状況について調査研究してきたことを発表いたしました。業界のスタンスとしては、安全が確保できていない現状では使えませんということになるんですが、もっとも重視すべきは安全性の確保ですからね。
 それと、消費者のライフスタイルが変わってきたということも結構大きいと思います。これまでは、酒屋さんから運んでもらうとか、酒屋さんに持って行けばボトルも引き取ってくれました。ところが今、スーパーマーケットやコンビニではボトルを引き取ってくれません。回収や輸送距離のコストもかかりますしね。
 また、ご存知だと思いますが、PETボトルの一番の欠点は、吸着しやすいことです。例えば、何か毒物を入れたときにそれを完全に除去できるのか。現在の洗浄技術をもってしても完全にとり切るのは難しいと思います。においセンサーや味センサーなど、いろいろありますが、それだけでは除去し切れないということが一番問題なのです。
 最後にリサイクルについては、2010年までに回収率75%以上という目標を立てて、昨年の回収率は、前年より2.9ポイント上回って、69.2%になりました。これは世界最高水準です。

辰巳 これは家庭からのものだけですか。事業系のものは入っているんですか。

服部 事業系は11万3000トン入っています。
リサイクルの取り組みについては、自主設計ガイドラインをつくっています。最近、スーパー、コンビニを回ると色つきボトルが非常に多い。それを全部調査しまして、問題がある企業については、自主ガイドラインを守ってくださいというお願いをしております。

辰巳 直接事業者に言うのではなく流通との協力は、なさらないのでしょうか。

服部 検討中です。ただ、自主ガイドラインは法律のように強制はできないので、難しいところはあります。

辰巳 そのケースでは消費者の力が必要ですね。

服部 そうですね。どうぞよろしく、お願いいたします。
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主体間連携
一般の消費者には、要領よく大事なエッセンスを伝えることが大事
公文 最後に、大変大きなテーマですが、前回の容リ法の改正で3つの基本計画がまとめられました。3Rの推進、社会的コストの削減、市民・行政・事業者の各主体間の連携となっています。そこで辰巳さんに、主体間の連携のあり方や、情報発信のあり方についてぜひお知恵を拝借したいと思います。

辰巳 消費者を動かし、つなぐために、国も3R推進マイスターを設置されたのだと思いますので、私たちも消費者にさまざまな有益な情報をわかりやすく伝えるようにしなければならないと考えます。今日お話を伺った中で、特にリデュースに関しての素晴らしい取り組みは、誰もがもっと知りたい話だと思います。
 リサイクルですが、プラスチックとしては、PETボトルほどリサイクルしやすいものはないと思っています。その辺は私たちも伝えたいと思いますが、皆さんもていねいに伝えてほしい。子供たちにはすごくいい教材だと思います。
 今は、PETボトル飲料を飲まないようにすることは難しい話で、消費者も利便性からPETボトルを購入せざるを得なくなっています。使われた後、こういう素晴らしい方法もありますよといったことを繰り返し繰り返し示していく。先ほど、テーブルの上のお花がPETボトルのリサイクルでできていると聞いてびっくりしましたが、いろんな方法を情報として正確に伝えていくことが重要と思います。
 でも、そのためには使用済みのPETボトルをちゃんと洗って出してくださいといったことを、最低限のマナーとして知らせていかなきゃいけないだろうと思います。
 最近、あるプラスチック製品の団体からお話をいただいて、学生さんを巻き込んで社会の中の包装材についていろいろディスカッションする機会を得ましたが、こういった活動はすごく大事だと思います。
 PETボトルはリサイクルの優等生だと思っています。20年前のあのすごい苦境をくぐり抜けてよく変わったと思います。叩かれたがゆえに良くなった、という気がします。

服部 それと、PETボトルは家庭の中にもう完全に定着していますしね。

辰巳 20年前を知っている私としては悔しいですが。(笑)

服部 これからも容器をつくる側としては、いかにリサイクルしやすくするかということを考えていかなければいけないと強く思います。例えば、おしょうゆのボトルを排出するときにキャップをとりやすくするとか。いろいろやっていきながら皆さんに理解していただくことが非常に大切と思っています。

辰巳 これからも、消費者の声を聞いて、たゆまぬ努力はしていただきたいと思います。ちゃんと伝えてくれる人に伝えていくというのも大事ですね。いい連携ができると嬉しいですね。

公文 そうですね。我々もきちっとした発信を着実にしていきたいと思います。
 それでは、長時間にわたり、率直なご意見をいただきまして、本日は本当にありがとうございました。
 
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