RING PETBOTTLE RECYCLING
PETボトルの環境対応と将来のビジョン
2004年度PETボトル回収率は事業系回収量を加えて62.3%と回収率の続伸をすることができました。「2014年度PETボトル回収率80%以上」の長期目標を設定しました。
 ――きょうはお忙しいところお時間を割いていただいてありがとうございます。
 それではまず、(社)全国清涼飲料工業会(以下全清飲)※1平本会長から、清涼飲料の歴史とPETボトル容器についてお聞かせください。

平本会長 全清飲は1955年に公益法人として認可され、2005年4月、50周年を迎えました。清涼飲料メーカーと関連企業で構成し、公共の利益と調和のとれた清涼飲料業の発展、品質の向上と安全の確保、また正しい知識の普及を目標として活動しています。実際に飲料そのものが世の中に認められて、一般の消費生活の中に入ってきたのが、1960年ごろからだと思います。全清飲発足当時の清涼飲料の生産量は、サイダーやラムネなどを中心に34万klでしたが、それから50年後の本年は、その50倍の約1,700万klが見込まれています。
 飲料が一番大きく成長したのが1961年のコーラ飲料の完全自由化でしょう。これを皮切りに炭酸飲料が非常に伸びてきました。1969年に日本の新しい文化である缶コーヒー飲料が登場しました。そして、1975年ごろからスポーツ飲料などの付加価値商品が出て、とりわけ近年は、無糖茶飲料やミネラルウォーターといった、従来のわが国においては購入する習慣の無かった飲料の伸びも目覚しく、日本人の生活にすっかり定着しています。このように商品そのもののバリエーションが変わってきたことも事実ですが、PETボトルの容器が清涼飲料を大きく支えてきたことは間違いない事実だと思います。
社団法人 全国清涼飲料工業会 会長 平本 忠晴  特に、1982年に大型PETボトルが家庭の冷蔵庫の中に取り入れられて、家庭内需要を大きく喚起したこと、また1996年4月から国内の会員各社が、小型PETボトルの生産を開始したこともあり、アウトドアでの利便性が認められたことが飲料を多様化し、大きく伸ばしてきたと思います。
 今、飲料容器の60%以上がPETボトルになってきています。これは消費者の皆様から大きな支持を受けた結果です。また、PETボトルの容器としての改善については飲料メーカーだけでなく、容器メーカー、原料メーカーと連携した大きな成果だと思っています。
 利便性がPETボトルの需要を後押し
平本会長 消費者のニーズは、食生活の嗜好、ライフスタイルの変化とともに、より健康性を求めた飲み方など、多様化してきたと思います。
 私は、飲料には飲み方のTPOというのが主に3つあると思うのです。1つはのどの渇きをいやすために飲む飲料。2つは、食事とともに飲む飲料。特に緑茶飲料などがそうだと思います。日本では最近、外食する機会が多くなって、食事とともに飲む新しい飲料がふえてきました。3つは、健康性を求めて飲む飲料。いわゆる機能性を持たせた健康飲料。それが、いま飲料そのものが約1700万klの消費が見込まれている大きな要因だと思いますね。

――PETボトルリサイクル推進協議会(以下推進協)としてリサイクルに取り組んでこられたご苦労をお聞かせください。

和田会長 平本会長がおっしゃったように、飲料を購入する生活者としての消費者は、利便性を求めて生活形態を変えてきたわけですね。そういう中で、PETボトルは他の容器に比べて非常に便利だということで伸びてきているわけです。一方我々は、容器包装リサイクル法(以下容リ法)※2を基本に資源循環型社会をつくっていくという事業者としての役割を持っているわけです。今の時代の環境対応をいかに向上させていくかということが非常に大事なので、推進協もそういう思想のもとに設立されて、現在、全清飲を含め5団体が加入され、活動をしているわけです。
環境対応をいかに向上させていくか  この容リ法の中で、PETボトルがリサイクルの対象となって、我々にその役割が与えられたのは1997年で、当初は回収率が非常に低かったのですが、消費者と市町村と事業者のそれぞれが役割を全うすることが回収量を増やすことにつながり、次に回収された使用済みのPETボトルを再商品化するための体制づくりが必要だということでした。再商品化能力の充実のため、実際に資金を投じて、設備を整えてきました。また、使用済みPETボトルを回収するためのいろいろなPRも相当やってきています。
 さらにいえば、この資源循環型社会形成の中でいわゆる3R※3といいますか、これは物をたくさん集めて、たくさんリサイクルさせるということ以外に、3Rの頭にあるリデュースに関しても、各団体、各企業の人たちがさまざまな努力をしてきました。
 今までの経緯の中での一番苦労した事は、使用済みPETボトルがたくさん集まり、それがリサイクルできない状態が一時的に起こったということですね。これに関しては我々はいろいろお手伝いをして、再商品化能力を増加しました。今は逆に使用済みPETボトルが足りないという話になっています。こうした中でこれからの循環型社会にどう対応していくのか。今までの成果としては、すでに多くの方がご存知だと思いますが、回収率は、1997年の9.8%から、2004年の実績は62.3%という世界最高水準で上がってきています。
環境負荷の低減と社会的総コストの削減が重要な課題  問題は、これからさらに回収率を引き上げていくために、どういう努力をしていくのかということが課題だと思っています。
平本会長 そうですね。PETボトルは、これだけ高い回収率を上げていて、短期間に欧米の3倍ぐらいまで回収しているわけですから、容リ法が施行されてからの約10年に各業界が非常に努力してきた結果だろうと思います。しかし消費者の皆さんは利便性を求められますので。これは飲料に限らず、しょうゆ、酒類、乳飲料等のPET化の普及ということからもわかりますように、時代の流れだと思います。全清飲も、推進協との協力によって、リデュースとしてのボトルの軽量化や完全循環型リサイクルである実質的なリユースといえる化学分解法「ボトルtoボトル」の実現に取り組んできました。特に「ボトルtoボトル」については、各業界が一体となって、安全性の確認をいたしました。
 その結果、食品安全委員会より食品用容器包装として認められ、2004年4月から店頭に並ぶようになりました。そういう中で、環境負荷の低減と社会的総コストの削減が重要な課題だと思います。
和田会長 リサイクルしやすい容器をつくるために、「自主設計ガイドライン」を定めて、着色ボトルの廃止をはじめ、さまざまなことに取り組み、実行してきました。すでに着色ボトルで販売してきた事業者については、着色ボトルからクリアボトルへの変更をお願いしました。それには相当の痛みをともなったと思います。
平本会長 着色ボトルの廃止については2001年「自主設計ガイドライン」を改定して、各社にお願いし、一斉に廃止しました。もちろん、日本の企業が提携している海外の大手企業にも理解をいただき、日本向けの特別仕様のクリアボトルを開発していただいた例もあります。また、ラベルをはがしやすくするためにミシン目をいれました。推進協の「自主設計ガイドライン」に定められたものを各メーカーが実行してきた成果です。それが具体的なビジネスのライフサイクルになってきているように思います。
和田会長 世の中のリサイクルの技術が発達しているということをもっと啓発して、アピールしていかなければいけないと思います。
 環境保全の意識向上にもっと努力を
平本会長 これは余談ですが、全清飲ほか、5団体が加盟している、(社)食品容器環境美化協会※4が、空き容器の散乱防止、まち美化活動を進めてきました。たしかに昔は缶が町いっぱいにポイ捨てされていましたよね。ところが、今はほとんど見かけません。これはまち美化運動のおかげでモラルとかルールの順守といったことをみんなが心がけるようになったからでしょう。今は、PETボトルはマイボトル感覚で持ち歩きますから、町がきれいだと、ポイ捨てしにくくなってきているのも事実だと思います。飲んだものをポイ捨てすることは人間の心理として出来ないものですね。これはたばこの吸い殻だって同じです。PETボトルの啓発活動にも、やはり時間が必要ですね。

和田会長 今のお話は業界の努力だけではできないと思いますね。

――環境保全をどう進めていくかというのが今後の課題だと思いますが、お考えをお聞かせください。

和田会長 環境保全という意識が国民の中で全般的に高まっていますから、これからも我々の業界も今までのような改善努力を続けていけば、もっともっと意識は広がっていくと思います。今後もいろいろな課題解決に向けて行っていきますが、これは我々だけの努力では出来ない事も多いため、国や市町村、もちろん消費者団体の方々と連係して一緒に考えなければならないと思います。
 環境保全は大切な課題ですから、全会員合意のもとに今いろいろなことを進めています。環境保全というのは多分終わりのないことだと思いますけれども、ただ、環境さえよければ生活者の利便性だとか幸せな生活様式を失ってしまってもいいのか。最終的には生活者としての消費者が選択されることですね。
PETボトルリサイクル推進協議会 会長 和田 國男 ――おっしゃるとおり環境保全は難しい課題ですね。

和田会長 例えば、オイルショックのときに、節電のために一斉に夜の繁華街の電気を消したわけですね。その後、石油の供給が緩和されたら、またこうこうと電気がつき出したわけです。そのときに石油がないから「仕方なく」ということでやったわけで、その後、事態が緩和すれば「仕方がない」とは言わないですね。やはり明るくてきれいな方がいいわけです。これは環境でそういう行動をとったわけではなく、やむを得ずとった行動です。これからの社会というのは環境とか、地球の持続性といった観点から物事を判断していかないといけないと思います。
 これが非常に難しいことだと思いますが、一部の人たちだけでは困るので、全国民にそれを理解してもらわなければいけません。そういうことをどうやって知ってもらうかですね。我々はもっと言い続け、説明し続けなければいけないと思います。

――PETボトルを使用する上で、今後のビジョンをお聞かせください。
 長期目標「2014年度回収率80%以上」を設定
和田会長 リサイクルというのは容リ法のもとで消費者、市町村、事業者が各役割を全うし、さらにその質を上げるための努力をすることだと思いますね。
 今の回収率というのは、行政と推進協が一体となって確実に把握した数量です。 しかし、まだ未確認量※5があり、それを明らかにする必要がありますね。さらなる回収率を上げるためにはどうするかを考えなければなりません。これは今の役割分担で、同時並行で進むべきものだと思います。
まだ未確認料があり、それを明らかに 「2014年度回収率80%以上」という目標をかかげていますが、極端にいえば、ほぼ100%近い回収率だって不可能ではないわけです。この目標達成が大きな課題だと思います。
 消費者がその生活環境の中で価値を認めた商品の購入行動を通じて容器も受け入れられていきます。もちろん平本会長が言われる、中身の安全性の確保や、健康によい飲料を提供しなければ受け入れられません。推進協は今後も社会の中に環境対応性をもった容器を提供する基準を備えて行動をしていきます。
 飲料もPETボトルも品質と安全性の向上が第一
平本会長 消費者に安全・安心な飲料を提供するために、HACCP(危害分析重要管理点)講習会の開催などを通して、事故防止・衛生管理に努めてきました。
 今後、各業界が健全な状態で発展していくには、商品の品質の向上と安全性の確保が第一です。それが、社会からの信頼をより高めていくと思いますので、消費者が望んでいる食の安全・安心という問題と一緒なんですね。さまざまな商品の開発も、それをベースに考えていくことが大切です。
和田会長 消費者の信頼を得るには、いかに安心してもらえるかということが大事ですね。
商品の品質の向上と安全性の確保が第一 平本会長 飲料のさらなる発展は、消費者に受け入れられる飲料の持つ価値をさらに高め、有価飲料率を上げていくことですね。日本では、有価飲料率はまだ50%ぐらいだと思います。アメリカでは80%〜85%ぐらいいっているかもしれませんが、これから人口もそんなにふえるわけではありません。そうなると、有価飲料率を上げるということは、今まで非有価でとられてきた水分補給を有価でとるということで、利便性などそれなりの価値を上げないといけません。PETボトルのミネラルウォーターはその良い例だと思います。清涼飲料はのどの渇きを癒すだけでなく、人の心に潤いをもたらすもので、その未来は明るいと考えています。それには飲料メーカーと、容器メーカー、原料メーカーが一緒になっていい商品をつくり上げていくことだと思いますね。

――きょうはありがとうございました。
(社)全国清涼飲料工業会
公共の利益と調和の取れた清涼飲料業の発展
清涼飲料の品質の向上と安全の確保
清涼飲料の健全な消費のための正しい知識の啓発普及
以上を目的とし、清涼飲料を製造する企業を中心に構成されています。目的を達成するため、会員相互の連携協力のもと活動をしている団体です。
容器包装リサイクル法
容器包装廃棄物の分別収集、再商品化を促進するため、1995年6月に制定。1997年4月よりPETボトルとガラスびんについて、事業者の再商品化義務が生じ、市町村による分別収集も広く行われるようになった。
3R
資源循環型社会形成に必要な、Reduce(減量)・Reuse(再使用)・Recycle(再利用)の頭文字をとった略称。
(社)食品容器環境美化協会
「飲料容器の散乱防止」と「環境美化」の推進をテーマに、飲料メーカーの団体が集まって活動する団体。「飲料容器の散乱防止と環境美化」に向けて、「環境美化活動の推進・支援」と「調査・研究・提言」に努めている。
未確認量
樹脂生産量−収集量(市町村分別収集量+確認された事業系回収量)
事業系回収量の控除は'01年以降で、その量は以下の通り。'01年:16千トン、'02年:32千トン、'03年:55千トン、'04年:81千トン
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