RING PETBOTTLE RECYCLING
資源循環型社会形成を目指して PETボトルリサイクルの現状と成果・今後の展望
 新春座談会
豊田 日頃は何かとご指導をいただきまして、また本日は、大変お忙しい中、私どものために時間を割いていただきまして、まことにありがとうございます。協議会一同、感謝申し上げております。本日はよろしくお願い申し上げます。
 回収率、軽量化などに容器包装リサイクル法の成果が
伊藤 PETボトルの容器包装リサイクル法(以下容リ法)※1の全面施行から7年。2002年度の市町村の回収率45.6%、事業系※2も含めると53.4%と着実に実績を上げてきました。そのあたりからお考えをお聞かせいただきたいと思います。
藤井室長 基本的には、市町村を中心とした回収率の向上を通してリサイクルが進展し、大きな成果が上がってきました。また、容器の軽量化により、リデュースの方も一定の成果を上げてきているのではないかと思います。
 これらは容リ法の成果でもありますが、何よりも地域住民の方々、市町村、そしてPETボトルリサイクル推進協議会を中心とした事業者の皆様方のご協力、ご努力の成果であろうと思います。この場をお借りして心から感謝を申し上げたいと思います。
井内課長 まさに今、藤井室長からもお話がありましたように、関係各位皆さんのご努力で国全体のレベルで、これだけしっかりとした回収をして、リサイクルをするシステムが定着してきたというのは、並大抵のことではないと思います。
 もちろん国民一人ひとりのご協力があって、それを市町村、さらに産業界、リサイクル業界という形で、いろいろな方々の協力関係がきちっとできているということの証左だろうと思います。
 リサイクルの観点からしますと、当初は設備の立ち上がりがなかなか進まないということで、国もいろいろ支援をして立ち上げてきたわけで、危うい状況もありましたけれども、最近ではむしろ処理能力の方がかなり大きくなって、競争がかなり激しくなってきています。そういった意味で、まだまだ回収量を増やす余地はあります。
豊田 私どもも、まだまだやるべきことがたくさんありまして、先輩方が今日までいろいろ努力されてきて、また関係省庁、市町村のご協力がないとできないことでもありますので、今後もますます鋭意努力していきたいと思っています。
 また、先ほど出ましたPETボトルの軽量化ということでは、ここ2、3年で、500ml、1.5l、2lのサイズで約12から13%の軽量化を達成しています。
井内課長 そこは、技術の力がいい方向に作用しているいい例で、容リ法の一つの大きな成果として挙げられると思いますが、さらに改善の余地がないか、軽量化だけではなくて設計上もさらにいろいろ工夫をしていただくように、お願いできればと思います。
藤井室長 一つだけ付け加えるとすれば、軽量化のいろいろな例は聞いていますけれども、大企業だけではなくて、「業界全体」として軽量化が進んでいるのか、このあたりを一つの視点として持たなければいけないのかなと思っています。そのあたりはどんな感じをお持ちでしょうか。
豊田 設計から始まって、商品化のときから相当工夫をしています。それぞれ各社でいろいろな取組みをしていますが、業界トータルとご理解していただいてもいいんじゃないかと思います。
藤井室長 いわゆる循環型社会形成の構築という観点から、3R※3(リデュース・リユース・リサイクル)の推進が重要です。容リ法の下ではリサイクルが注目されがちで、リデュース・リユースにもっと努めていかなければならないというご意見も強くありますので、そういう意味では、正にリデュースにつながる軽量化の視点は、これからもぜひともよろしくお願いしたいと思います。
井内課長 ちなみに、1l当たりの樹脂使用量が100から92%になっているというのは、たとえば容器が小型化して、最近では350mlや250mlというのが出てきていますが、そういうものを勘案しても、1l当たりで減っているという意味ですね。
豊田 現在のところそうですね。
井内課長 そういった意味でも、法制度がそういう技術開発を促進しているという面もあるのかもしれません。
豊田 業界としても積極的に取組んでいるところです。
環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部
企画課リサイクル推進室
室長  藤井 康弘 氏
1983年 厚生省(現厚生労働省)入省
(大臣官房人事課)
1998年 同省大臣官房人事課課長補佐
2003年 厚生労働省大臣官房総務課
企画官(併)年金局を経て、
2003年 8月現職に就任
 よりリサイクルしやすいPETボトルに
井内課長 さらに容器メーカーの方で、環境に負荷の少ない、リサイクルしやすいPETボトル開発を進めていただければと思います。
 特に容器の軽量化は、必要な機能を維持しながら、どこまで技術によって解決できるかということですから、正に日本のメーカーの最も得意とするところだと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思うのです。
豊田 容器の設計については樹脂も剛性のある、薄くても外圧に対して強くなる構造を研究開発していきたいと思っています。
 また『自主設計ガイドライン』※4を業界で設けて、よりリサイクルしやすいPETボトルにしようと努力しています。代表的なところでは、着色を廃止しました。世界的に見ても、そういうガイドラインをつくって、無着色のボトルだけをつくっている国はまずないんじゃないでしょうか。
井内課長 拡大生産者責任※5(EPR)の一つの目標としては、やはり製品設計に下流側のいろいろな要素が反映されるということだろうと思うのです。ですから、ぜひリサイクル業界のいろいろな意見も踏まえて、容器の方に反映されるという環ができるような配慮をしていただければ、これからますます効率的にリサイクルができるのではないかと思います。
藤井室長 私も全く同感です。ただ、このリサイクルしやすい設計とか素材の組み合わせについても、これはPETボトルに限りませんが、容リ法施行後のいろんな例を聞くわけですが、大企業のいくつかの「例」に留まっているのではないかという問題意識がやはりあります。特定の企業だけではなく業界全体がそちらの方へ動いていくようなことになればありがたいと思っていますので、今後も引き続きよろしくお願いします。
井内課長 そういった意味でも、環境に優しい容器だということで消費者に訴えられる時代が、徐々に来つつあるんじゃないかと思います。容リ法はそういう意識を変える役割を果たしてきた面もあるのかなと思いますけれども、ぜひそういう努力を続けていただきたいと思います。
 再利用製品需要も順調に拡大
伊藤 ところで、グリーン購入法の施行が追い風となって、PETボトル再利用品も需要が順調に拡大してきています。そのあたりの実績、効果という部分についてもお聞きしたいと思います。
井内課長 たとえばPETボトルを使った繊維でつくったユニホームを大量購入される企業が増えてきているとか、いろいろお話を伺うのですけれども、そういうシンボリックな面で再利用製品を使うという動きはかなり広がっているのだろうと思うのです。また、たとえばボールペンのように、グリーン購入によってある程度のロットができて、それによってコストが下がるといういい循環になりつつあるものもかなりできていると思いますので、こういった品目をなるべく拡大していくことが一つあると思います。
 他方で、たとえば私が今日しているこのPETボトル再利用品のネクタイも、どこで買ったらいいのかなかなかわかりにくいという問題があって、そういったマーケティング努力は、やはり最初は産業界の方である程度やっていただく必要があるのかなと思います。潜在的にそういう再利用製品を買ってもいいと思っている消費者に、あるいは消費する企業に、いかに目につくところに訴えられるかというご努力が大事なのだろうと思うのです。
藤井室長 グリーン購入法の成果という意味では、行政側というよりも、むしろ産業界の方でどれぐらいインセンティブが働き、波及効果があったのかというところがわかればありがたいですね。
 ただ、これは素朴な感想みたいなことになりますけれども、PETボトルのリサイクルだけとりましても、ここ数年でいろいろな用途、リサイクルの手法、販路が出てきて、しかも、クオリティーも随分上がってきて、さらにボトルtoボトルまで実用化されようとしている。いろいろな社会的ニーズに押された部分ももちろんあるにしても、事業者の皆様方の努力は大変なことだったと思いますし、環境政策の立場からしましても、大変ありがたいことだと思っています。
豊田 グリーン購入法が施行されてから、シート用、特に卵パックのシートには、いろいろな他の素材から、PET樹脂でなくて、再生PETに来たんですね。
再生PETが競争力があるということで、それでバーッと火がついたというのは非常にありがたかったですね。本当にグリーン購入法の精神が、ここで花開いたような気がいたします。行政が直接卵パックを買わないですからね。(笑)
井内課長 大きなマーケットに対する起爆剤が必要だということなんでしょうけれども、そういう大きなマーケットに対するアプローチをこれからも続けていただければ、どんどん需要開拓できると思うんです。PETはかなりできている方だろうと思うのですけれども。
豊田 ありがたいことです。
経済産業省産業技術環境局
リサイクル推進課
課長  井内 摂男 氏
1983年 通商産業省(現経済産業省)入省
1998年 同省通商政策局中東アフリカ室長
2001年 (財)2005年日本国際博覧会協会
企画調整部長を経て、
2003年 7月現職に就任
 ボトルtoボトル(BtoB)に大いに期待
伊藤 循環型社会形成の構築に向けて、3Rの推進という具体的な国の指針が示されており、その中でボトルtoボトルは準リユースという位置づけでとらえられるのではないかと考えています。その点についてもお聞かせいただければと思います。
藤井室長 準リユースと呼んでいいのかどうか定義まで整理しているわけではありませんが、一つのリサイクル手法として大いに期待をしています。
 LCA※6(ライフ・サイクル・アセスメント)でどんな数字が出てくるかというところも関心を持っており、環境省として今3年計画でやっていますLCAの調査研究事業の中でも、このボトル toボトルの手法について何らかの評価ができないかと考えているところです。またご協力をお願いします。
井内課長 そういう意味でも、リサイクル、再利用製品というと、どうしても徐々にグレードが落ちていくという話になってしまうのですけれども、なるべく質の高いレベルでリサイクルされていくようにするのは、これも技術の力だろうと思うのです。順調に立ち上がっていくことを期待したいと思います。
豊田 2月26日の食品安全委員会で、パブリックコメント※7に回していただけるという結果も出ていますので、新たな方向がもう一つ実現ということで、1日も早く稼働することを期待しています。
PETボトルリサイクル推進協議会
会長  豊田 保 氏
1966年 株式会社吉野工業所に入社。
米国シカゴ工場長などを経て、
2003年 より本社取締役
(国際・技術管掌)に就任。
2004年 からPETボトル協議会会長および
PETボトルリサイクル推進協議会会長。
 環境教育や環境学習、3Rの啓発に
伊藤 私どものPRになりますが、今後の回収率向上につながる活動の一環としての環境教育や環境学習、3Rの啓発に取り組みたいと思っています。
豊田 私どもの活動を、いわゆる市民の目線で、具体的な中身に至るまで議論していこうと思っています。なるべく市民に直接触れる場面を大切にしていきたいということで、ホームページであったり、環境学習の場となっています市町村レベルの資源化センターなどへも、5年間がかりでビデオやポスターなどツールの整備を着実におこなっています。
 自治体などの環境関係の方々がいらっしゃる展示会でも、限られた予算の中で、情報発信の高いNEW環境展とか、市民レベルではエコプロダクツ展とか、絞りながら工夫してやっているというのが現況です。
 ツール関係は、市町村の方にも直接届く広報誌「RING」も、さまざまな情報を掲載していこうと考えています。
 もう一つは、これも力点を置こうと思っていますのは、オピニオンリーダーの方々と接点を深めることです。さらに1歩も2歩も進めて、環境省、経済産業省の政策を含めて、私どもが取り組んでいる状況も、日々の活動レベルをアピールしていきたい、そんな考え方で活動をしています。
井内課長 私どもも3Rの推進ということで、産業界だけではなくてむしろ各地域の市民、あるいは学校を一つの拠点に3Rの意識を高めることができないかと、まさにPETボトルのフレークから再利用製品になるまでの流れがわかる教材をご提供いただいて、それをいろんな学校に貸し出して教育に使っていただこうとしており、ご協力に感謝しています。
 そういった草の根的な活動もこれからますます重要になるだろうと思いますね。ホームページも重要ですけれども、そのホームページにまずアクセスしていただくまでが大変なところもありますから、いろいろなやり方を併せていかないといけないのだろうなと思います。
藤井室長 PRについては市町村の方でも、それぞれにご努力いただいていますが、こういったPRとか啓発は、どの主体がもっぱらやればいいというものではなく、いろいろな主体がいろいろなやり方で、多層的にやっていくのが大事だと思っています。協議会の皆様方にも引き続きよろしくお願いいたします。
井内課長 いろいろ伺うと、日本のPETボトルのベールは、他国と比べて非常にきれいなんだそうですね。
豊田 日本の分別収集の効果が大きいのではないでしょうか。回収率も世界でトップレベルを維持しています。
井内課長 市町村回収のものは、年々品質が良くなっていると日本容器包装リサイクル協会からも聞いていますけれども、そういった意味では、もちろん市町村が市民に対して教育や啓発活動をするというのもありますし、それとあわせて、産業界でも消費者向けのいろいろなPRをしていただいて、自分の捨てたPETボトルが最後どうなるんだというのがわかれば、みんなきれいに排出するようになるだろうと思うのです。そのあたりの努力をこれからもぜひ続けていただければ、低コストで質の良いリサイクルが実現していくと思います。
 事業系の把握は今後の課題
伊藤 市町村の回収率のお話が出ましたが、事業系の回収率についてお考えをお聞かせください。
藤井室長 私どもとしても、事業系が今どんなふうな実態にあるのか、どんなふうに処理されているのかということには、非常に関心を持っています。全体の状況ということになりますと、正直まだなかなか捕えきれていないのですが。
 協議会では、いつも事業系がいくらという数字を出されていますけれども、どういうとらえ方で数字を出されているのか、教えていただければありがたいのですが。
豊田 一般廃棄物として家庭系で回収された量はクリアーになっていますが、それ以外の事業系のものについては、数多くのルートがあるようです。協議会では事業系ルートの調査を行い、2001年度は、1万6000トン、2002年度が3万2000トンと把握できました。
 それ以外の、国内で直接再商品化されていない量なども、いずれ量的な加算ができればと考えていますが、実際調査してみますとルートの全数を探るのはなかなか難しいのが実態です。
井内課長 ただ、環境政策の分野でも、産業政策の分野でも、やはり生産者の責務という議論はこれからますます強まっていくと思うのです。そういったときには、これだけの回収率を達成しているということも重要だと思いますが、捕捉できていない部分をなるべく捕捉して、産業界全体としてどこまで努力されているかということをやはりきちっとアピールできるようにするのも重要なのではないかと思います。
 実は捕捉してみるともっと高い回収率になっているかもしれない。そういう実態に基づいた議論を、社会的にしていかなければいけないのだろうと思います。
豊田 業界としてはさらに努力を続けていきますが、今後は国をはじめ関係する皆様のご協力もお願いしたいと思っています。
 さらに高いレベルの3Rを目指して
伊藤 それでは最後に今後の展望についてお話をお聞かせください。
藤井室長 PETについては回収率も随分上がってきていますし、軽量化も進んできていますし、リサイクルそのものも進んできてボトルtoボトルまで実用化の段階に入っています。こういう意味では、容リ法ができた時点と比べると、PETをめぐる状況はかなり変わってきていると私は認識しています。
 容リ法も見直しの議論をそろそろ進めていかなければならない時期です。PETボトルについても、この7年の状況の変化を踏まえつつ、循環型社会形成を目指して、さらに3Rがしっかり進んでいくような見直しの方向を、これから皆様と一緒に検討していかなきゃいけないと思っています。ご意見、あるいは実態もお聞かせいただきながら、進めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
伊藤 ありがとうございます。
井内課長 最初に申し上げたように、これだけの大きな法制度を着々と実施してきて、大きな社会システムとして定着してきたということは、本当に偉大なことだと思うのです。ただ、循環型社会形成の姿として国民全体が思い描くものも、時代とともに、どんどん先に進んでいくのだろうと思いますので、今の制度は今の制度で着々と成果を上げていく上に、さらに次の時代のあるべき姿は何かというのは、やはり産業界の方々も、時代の流れの先を見ながら考えていただかなければいけない。その時に、産業界としてどういう責任を果たしたらいいのかという意識を常に持って、次の高いレベルに行っていただきたい。先ほどの3Rの面、あるいは容器の設計といった面も含めて、あらゆる面でその努力を続けていただくことを強く期待しています。
藤井室長 そういう意味では、これまでもいろいろなご努力をしてきていただいた上に、またさらにご努力をお願いする、そんな議論になることもあるかもしれませんが、お互いに虚心坦懐に、まさに井内課長がおっしゃったような次の時代の循環型社会形成はいかにあるべきか、という大所高所からの議論が一緒にできれば大変ありがたいと思っています。よろしくお願いします。
豊田・伊藤 本日は、どうもありがとうございました。
※1 容器包装リサイクル法
容器包装廃棄物の分別収集、再商品化を促進するため、1995年6月に制定。1997年4月よりPETボトルとガラスびんについて、事業者の再商品化義務が生じ、市町村による分別収集も広くおこなわれるようになった。
※2 事業系
市町村の分別収集以外にスーパー、コンビニエンスストア、駅、遊園地、ビルなどで自主的に回収されるPETボトル。
※3 3R
循環型社会形成に必要な、Reduce(減量)・Reuse(再使用)・Recycle(再利用)の頭文字をとった略称。
※4 自主設計ガイドライン
リサイクルしやすいPETボトルを設計するために当協議会が1992年10月に制定したガイドライン。以後、1995年4月に飲料・しょうゆ・酒類用と別々にあった基準を統一し、1998年1月の改訂を経て、現在は2001年4月の改訂版を使用している。
※5 拡大生産者責任
製品の製造者は、製品の性能だけでなく、その製品の生産から廃棄までに及ぼす環境影響に対して責任を負うべきとの考え方。
※6 LCA(ライフサイクルアセスメント)
製品の原料調達から生産、流通、消費、リサイクル、廃棄にいたるまで、ライフサイクル全体での環境負荷を評価し、改善点を探っていく方法。
※7 パブリックコメント
国や地方公共団体などの行政が、新たな行政計画等を作成するときに、その案を公表し一般からのコメント(意見)を求める制度。
TOP BACKNEXT PET
Vol.13PETボトルリサイクル推進協議会