関東学院大学 法学部 教授
法学博士
織朱實氏
今年度の年次報告書は、従来の第三者機関によるコメント方式から、ダイヤログ方式に変更されました。こ座長からのコメントこに、さまざまなステークホルダーから意見を聞き、活動に活かしていきたいというPET推進協の意欲が感じられ、評価したいと思います。また、今年度は、今までのデータや活動の総括だけでなく、3Rを取り巻く状況にPET推進協がどのように関わってきているかのデータや記載を増やしている点が特筆すべき点でしょう。
例えば、「リサイクル」の章では、従来回収率の表示であったのがリサイクル率の表示となり、海外流出分の物量も含んだフロー図や製品の実態調査のデータも示されています。分別排出されたものの再商品化ルートにのっていない容器包装廃棄物の問題、自治体から国内ルートではなく海外に輸出されている「円滑な引渡し」にかかわる問題。リサイクルを取り巻く問題は年々変化してきていますが、最近は分別回収されたものがどのような製品になっているのかリサイクルの「視える化」が海外への輸出ともからみ話題になっています。そうした中で、回収率でなく国内向けリサイクル量と海外向けリサイクル量を分子としたリサイクル率を示し、再生PET樹脂製ユニフォームの実態調査結果を表示してくれている点などは、大変評価できると思います。これらのデータは、これから市民・自治体がどのように「視える化」「円滑な引渡し」問題に取り組んでいけばいいか考える上で貴重な資料になるでしょう。
一方、リデュースについては昨年よりも多くの紙面が割かれていますが、3%の目標達成までの事業者の努力や技術革新の動きがみえてこないのが少し残念です。軽量化は事業者の重要な取組ですので、是非市民にもその努力が伝わるように工夫をお願いしたいです。
リターナブルについては、今年は環境省によるリターナブルPETボトルの委員会が注目をあつめました。リターナブルPETについては、安全性、本当に環境負荷を低減するのか、という議論がさらに深められる必要が今後ありますが、本報告書では業界の問題意識が「今後の研究課題」というかたちで明確になっておりよいと思います。これからリターナブルについては容器全体を通じて「どうあるべきか」の議論に役立つ研究になり、来年度はさらに充実した記載が行われることを期待します。
全体を通じてみると、毎年継続して発行されることにより、資料的価値が大変高い報告書となっています。特にPETボトルの再商品化の流れのフロー図や回収率・リサイクル率のデータは、使う人にとっては大変貴重な資料です。ただ、市民や活動をしているNGOにとって分かりやすい報告書かという点ではまだ改善の余地があるでしょう。具体的には、@誰にどのような情報を何のために伝えたいのか、A今年度協議会はどのような活動に特に重きをおいてきたのか、どういう方向を目指しているのか、協議会の取組姿勢が明確になってくると、さらに市民・自治体にとっても読みやすく、また利用しやすい報告書になっていくでしょう。年次報告書が資料的価値を超えて、市民・自治体とのコミュニケーションツールとなるための今後の工夫に期待します。