9. 年次報告書を読む会 2008
報告書のさらなる改善と協議会活動の発展のために
これまでの年次報告書では、事業系回収量調査に対して監査機関による第三者コメントを掲載してきました。
2008年度の報告書の作成にあたっては、さまざまなステークホルダーからご意見をいただき年次報告書を改善するとともに、今後の協議会活動に有益な示唆をいただくことを目的に、「年次報告書を読む会2008」を開催しました。
2008年8月26日に実施した読む会には、委員として有識者やNPO、自治体、再生事業者という幅広い分野からお集まりいただきました。以下に、いただいたご意見の概要を掲載します。
年次報告書を読む会2008の様子
座長からのコメント

関東学院大学 法学部 教授
法学博士
織朱實氏


今年度の年次報告書は、従来の第三者機関によるコメント方式から、ダイヤログ方式に変更されました。こ座長からのコメントこに、さまざまなステークホルダーから意見を聞き、活動に活かしていきたいというPET推進協の意欲が感じられ、評価したいと思います。また、今年度は、今までのデータや活動の総括だけでなく、3Rを取り巻く状況にPET推進協がどのように関わってきているかのデータや記載を増やしている点が特筆すべき点でしょう。
例えば、「リサイクル」の章では、従来回収率の表示であったのがリサイクル率の表示となり、海外流出分の物量も含んだフロー図や製品の実態調査のデータも示されています。分別排出されたものの再商品化ルートにのっていない容器包装廃棄物の問題、自治体から国内ルートではなく海外に輸出されている「円滑な引渡し」にかかわる問題。リサイクルを取り巻く問題は年々変化してきていますが、最近は分別回収されたものがどのような製品になっているのかリサイクルの「視える化」が海外への輸出ともからみ話題になっています。そうした中で、回収率でなく国内向けリサイクル量と海外向けリサイクル量を分子としたリサイクル率を示し、再生PET樹脂製ユニフォームの実態調査結果を表示してくれている点などは、大変評価できると思います。これらのデータは、これから市民・自治体がどのように「視える化」「円滑な引渡し」問題に取り組んでいけばいいか考える上で貴重な資料になるでしょう。
一方、リデュースについては昨年よりも多くの紙面が割かれていますが、3%の目標達成までの事業者の努力や技術革新の動きがみえてこないのが少し残念です。軽量化は事業者の重要な取組ですので、是非市民にもその努力が伝わるように工夫をお願いしたいです。
リターナブルについては、今年は環境省によるリターナブルPETボトルの委員会が注目をあつめました。リターナブルPETについては、安全性、本当に環境負荷を低減するのか、という議論がさらに深められる必要が今後ありますが、本報告書では業界の問題意識が「今後の研究課題」というかたちで明確になっておりよいと思います。これからリターナブルについては容器全体を通じて「どうあるべきか」の議論に役立つ研究になり、来年度はさらに充実した記載が行われることを期待します。

全体を通じてみると、毎年継続して発行されることにより、資料的価値が大変高い報告書となっています。特にPETボトルの再商品化の流れのフロー図や回収率・リサイクル率のデータは、使う人にとっては大変貴重な資料です。ただ、市民や活動をしているNGOにとって分かりやすい報告書かという点ではまだ改善の余地があるでしょう。具体的には、@誰にどのような情報を何のために伝えたいのか、A今年度協議会はどのような活動に特に重きをおいてきたのか、どういう方向を目指しているのか、協議会の取組姿勢が明確になってくると、さらに市民・自治体にとっても読みやすく、また利用しやすい報告書になっていくでしょう。年次報告書が資料的価値を超えて、市民・自治体とのコミュニケーションツールとなるための今後の工夫に期待します。
各委員からいただいたご意見(概要)

柏市役所 環境部
廃棄物政策課 主査
石名坂賢一氏


この報告書を毎年継続的に出しているというところが、まず評価に値すると思います。ただ、市民向けには難しいので、用語解説などを入れて基本的なことから理解できるものがあるといい。もっとターゲットを明確にして、専門家向けにはデータを充実させるなど、ホームページも活用して、より高度な情報開示・コミュニケーションを進めていただきたい。

NPO法人埼玉エコ・リサイクル連絡会
副会長
園田真見子氏


消費者には、ふたの扱いが一番徹底が難しく関心のあるところなので、もっと明確に書かれては。リサイクルは比較的わかりやすく書かれていますが、リデュースは説明されないとわかりにくいので、「こうしています」と少し強くアピールした方がいい。また、市民と事業者、自治体がもっと情報交換できる場を設けて欲しい。

NPO法人持続可能な社会をつくる元
気ネット 事務局長
鬼沢良子氏


色々な数字が掲載されていているが、一般消費者にはわかりにくい。もっと一般消費者の意識を高める報告書だと、目的である資源のより有効な活用につながっていくと思います。また、回りくどい言い方をしないで、抱えている問題などをもっとはっきりとうたったほうがいい。数年後のリサイクルのあり方を見据えて、ある程度の方向性を提示してもいいのでは。

ウツミリサイクルシステムズ株式会社
社長
内海正顕氏


中国など海外への輸出に関して、数字を把握するよう努力しており、報告書は納得性が高い。しかし、輸出については販売価格だけでなく、現地での環境負荷を含めてLCAで考えるべきでは。経済性の観点からみると、容リ法の基準が実態とあわない部分もある。キャップは分けることになっているが、コスト面でもリサイクルできるものであり、技術の進歩や資源の有効活用という観点から、もっと議論されるべき。
推進協議会からのコメント
今回の「読む会」からのご意見では、(1)リデュースにおける事業者の努力の開示 (2)推進協議会活動の重点項目や方向性の開示 (3)全般的に消費者に分かりやすい内容の提示などがありました。
可能な範囲で本年度版年次報告書にも反映させましたが、主たるところは来年度に向けた課題とさせていただきます。
特に消費者に対する情報提供については、年次報告書単独で対応することは難しいと考えています。従前より各種印刷物等情報やPETボトルの基本的な情報に関しては、ホームページ上にて記載していますが、今後ともそれらの情報をさらに充実すると共に、多様なステークホルダーが必要とされる情報を容易に得ることができる工夫を継続していかねばならないと考えています。
推進協議会からの出席者
推進協議会
会長
服部政夫
推進協議会
副会長
公文正人
推進協議会
専務理事
松野建治
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