PETボトルリサイクル推進協議会 広報誌 RING Vol.41

特集
PETボトルリサイクルの30年

3. 再商品化製品の開発

 回収したPETボトルの再生樹脂を利用した再商品化製品の開発も課題でした。使用済みPETボトルは1995年の容器包装リサイクル法施行以前より、繊維製品への再利用が行われていましたが、回収されたPETボトルを原料としたペレットは、バージン原料よりも水分含有率が高いため、乾燥工程で充分に水分を飛ばす必要がありました。さらに、異物除去や均一な染色性など、さまざな繊維加工にともなう品質課題がありましたが、繊維メーカーと加工メーカーの努力により、一つひとつ問題解決が行われ、最終的に衣料品などに使用できる品質レベルにまで到達しました。繊維メーカーも事業所や学校向けのユニフォームから、よりファッション性の高い素材の研究開発も行われ、さまざまな衣料品などに展開されました。
 その後、繊維に続き、再生PET樹脂を使用した板状プレート(厚み0.5mm~5mm)へも加工メーカーの努力で製品化され文房具、店舗装飾・販促グッズ、ディスプレイ用品など、幅広い分野に用途が拡大されました。

PETボトルから再生して製品ができるまで

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 また、1998年頃より回収したPETボトルから食品用トレイへの再利用も開始され、市町村回収品だけではなく、事業系ルートで回収されたPETボトルも利用できるなど、再生原料ソースの多様化も可能となりました。特に、事業系で回収されるPETボトルは、家庭から排出される市町村ルートよりも汚れや異物が多いため、再生ペレット生産時には、前処理で数々の選別工程を経てから、PETボトルを粉砕し、洗浄工程、風力選別、水洗浄、アルカリ洗浄、比重選別後、さらに揮発留分を除去といった徹底した異物除去により、食品トレイ向けに利用することができました。また、食品用トレイでは、再生原料(R)をバージン原料(V)でサンドイッチするVRV構造により、衛生面の確保やCO2排出量を約30%削減するなど大きな成果をもたらし、現在に至るまでの間に卵パックなどへの採用拡大により、国内再生PET樹脂の約半数を占める大きな再生市場が確立されました。

 さらに包装用フィルム分野での使用も始まりました。PETボトルをメカニカルリサイクルした再生PET樹脂を利用したパッケージで、厚生労働省のガイドラインに適合し、食品一次容器にも使用可能なものでフィルムは再生PET樹脂を業界トップレベルの80%使用しており一般PETフィルムと同等の物性と透明性を有します。一般消費者にもなじみが深いパウチなどの食品包装に採用が拡大しており再生PET樹脂の新たな用途展開例となりました。
 このように再生PET樹脂からはさまざまな加工方法により多種多様な再商品化製品が製造できることがリサイクル推進上、大きな強みとなっており今後さらに加工方法も高付加価値化することが予想されます。
 直近の2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」の中でも、「プラスチック使用製品設計指針」が定められていますが、PETボトルは、30年前からリサイクルしやすい「自主設計ガイドライン」を制定して運用しています。

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全国清涼飲料連合会(全清飲)の取り組み

一般社団法人全国清涼飲料連合会 専務理事 那須 俊一 氏

 全清飲のビジョンは「サーキュラー&エコロジカル・エコノミーの確立」において世界のトップランナーとなることです。サーキュラーは「資源循環」であり、エコロジカルは「地球との共生」を表しています。資源循環をしっかりして地球の元気に貢献していくことが目指す世界です。

 全清飲ではサーキュラー&エコロジカル・エコノミーを推進すべく、「2030年までのPETボトルの100%有効利用宣言」(2018年)に引き続き、資源循環のより具体的な方向性を示す「2030年ボトルtoボトル比率50%宣言」(2021年)をいたしました。CO2排出削減には新たな化石資源使用を最小化し、使用済みPETボトルを地上資源として最大活用していく必要があります。ボトルtoボトルは使用済みPETボトルを再度新しい清涼飲料製品に活用し、リサイクル前と後で用途を変えない資源循環手法です。新たな化石資源使用の最小化によりCO2排出削減が実現されます。まずは通過点目標として、全清飲では20.3%である現状のボトルtoボトル比率を2030年に50%まで拡大する計画です。

 ボトルtoボトルの推進においては、PETボトルをきれいに回収することが重要となります。自治体経由の家庭からの回収は大変きれいな回収が実現されている反面、自動販売機横リサイクルボックス(自販機横RB)などの事業体から回収されるPETボトルは異物が多く混入している例もあり、必ずしもきれいではありません。清涼飲料業界では、上記の課題解決のために、自治体との協働による啓発活動や自販機横RBを改良した新機能の自販機横RB上市(2022年秋)などの取り組みを行っています。
 清涼飲料業界は今後もサーキュラー&エコロジカル・エコノミーの確立に向けて邁進してまいります。引き続き皆さまのご支援・ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

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