PETボトルリサイクル推進協議会 広報誌 RING Vol.40

特集
PETボトル資源循環の入口

巻頭特集座談会
PETボトル資源化の入口
~資源化を担う中間処理事業者~

効率的なPETボトルのリサイクルを推進するために、事業系回収の品質向上は大きな課題となっています。
そのような中、回収されたボトルを分別し、次の再商品化につなげる中間処理事業者の果たす役割が再認識されています。2022年4月には、中間処理事業者同士が連携し知見の共有や相互扶助を図る全国容器循環協議会(以下、全容協)が設立されました。
今回の特集では、中間処理事業者の代表者3名とPETボトルリサイクル推進協議会の金子会長に、現在直面している課題や今後向かうべき方向性について語っていただきました。

進化を続ける容器選別の手法

金子 1977年にPETボトルが国内でしょうゆ容器として初めて発売され今年で45年、食品衛生法の改正により清涼飲料の容器として使用されるようになってから40年になります。2020年度の使用量が233億本と、この40年間で非常に大きな進展を見せた容器と言えます。
 ガラスびんから缶、紙容器、そしてPETボトルへと容器は変遷してきましたが、その中でもPETボトルは後発がゆえに、当初からリサイクルすることが命題となっていました。それを受けて我々の協会が設立され、皆さんと一緒にリサイクルを推進して今日に至っています。
 現在、事業系回収と市町村回収のPETボトルの比率はほぼ半々で、100億本近くを中間処理業者の皆さんが取り扱われていることになります。ぜひ課題を共有し、業界全体でリサイクルの輪を未来につなげていきたいと考えています。
 まずは、皆さんの工場の設備や容器選別の手法の特徴についてその点をお聞かせいただけますでしょうか。

斉京 約20年前に初めて作った飲料容器の選別ラインはPETボトル自体が少なかったので、短いライン1本でスチール缶やアルミ缶を人の手で選別していました。
 その後、缶については磁選機を導入するなどして機械での選別に切り替えましたが、PETボトルの量が増えてきており、最新の選別ラインにはPETボトルだけを打ち落とすソーターを導入しました。それにより、従前の4~5倍の量を処理できるようになりました。
 工場作業員の高齢化も進んでおり、現在、一番量の多いPETボトルの選別は機械で行い、品質チェックを人の目で行っている体制です。

武笠 当社も2010年に中間処理を始めた当初は、ほとんど人の手で選別していました。磁力選別機や風力ではじき飛ばす装置はありましたが省力化の効果はあまりなく、1ラインに35人くらい配置していましたね。
 今は2つの棟に2機ずつ設置しており、2022年に完成したラインは将来を見据えて最新鋭のAIを使った選別機を導入しました。また、ドイツ製(バリスティックセパレーター)があり、コンベアで軽いポリ袋は上へ、びんやPETボトルやアルミ缶は下へ、細かい異物は真ん中に落ちるという3選別を行っています。その後、磁力選別機、風力選別機、アルミ選別機とかけていき、缶の90%以上が選別できますが、次工程のAIによる選別機にて紛れ込んでいるPETボトル、缶を自動で取り出し、最終的に人の目でも確認することで分別品質を高めています。
 そうした作業の簡素化で人員を3分の1くらいに抑えることができました。工場は決して広くありませんが、ラインの設計を自社で行い、コンベアが垂直に上がっていくといった工夫を凝らして狭いながらも考えて作業を行っています。

赤坂 当社の場合、最初はガラスびんからスタートし、10年前から缶やPETボトルの選別も始めましたが、思ったよりもごみや水分、飲み残しが多く、規模的に対応が難しくなったので工場を新設しました。
 その後、ボトルtoボトルのリサイクルが始まりましたが、「ラベルがあるとPETボトルに戻しにくいのでは?」「品質の良いものをリサイクラーに渡すのが自分たちの仕事」と考え、ラベルを除去する機械を導入し、簡単な洗浄もできる工場をさらに1棟建設しました。
 また、飲み残しを処理する水処理施設を作り、そこでメタンガスを取ってバイオ発電も行っています。昨年は屋根にソーラーパネルも付けて、電力使用量の約25%をそれらでまかない、SDGsにも取り組んでいます。

金子 それぞれが工夫されて中間処理を行われているわけですが、技術や情報を共有されたりもしているのですか?

赤坂 彩源さんの工場を見学して、いろいろ参考にさせていただいています。最新鋭のAIを使った選別とか、詳しく教えていただきたいと考えています。

武笠 AIは現場の作業で精度が高まり、また新しい商品にも対応していきます。

斉京 私もAIに注目しています。

武笠 新潟にあるAIのメーカーから、当社のパソコンにリモートでデータが送られてきて学習効果をどんどん高めています。国内のロボット分野もかなりレベルが上がってきたと感じます。少子高齢化が進んでいくと、いつまでも人の手だけに頼るわけにはいかないので、我々の業界でも今後はAIが普及していくのではないでしょうか。
 来年の秋にはAIを24時間稼働させて、日中に貯めておいた容器を深夜に処理することを考えています。

行政に働きかけ啓発活動の強化を

金子 現在どのような課題を抱えられていますか?

赤坂 最近のPETボトルは軽くてかさばるので、非常に収集・運搬のコストがかかることです。パッカー車で他のものと一緒に圧縮した際、どうしてもアルミ缶とくっついたり、ガラスびんなどが刺さったりするので収集方法が限られ、コストがかかってしまうのです。

斉京 そのため工場に入荷するPETボトルの量は増えているのに資源化できる量は落ちています。軽量化が本当に正解なのかどうかは疑問です。

金子 PETボトルの生産本数は増えていますが、樹脂の使用総量は横ばいです。その観点からは省資源やコストダウンが図れているのですが、確かに軽いと風で飛んでいってしまうといった話もよく耳にするので、軽量化が進んだものはリサイクルのし易さが低下する場合があるということだと思います。皆さんのご苦労をお聞きして、なかなか難しいトレードオフだと改めて感じました。

赤坂 もう一つの課題は、回収したPETボトルのラベルとキャップは素材が一定でないため、比重選別が難しく、リサイクルしにく点です。

株式会社首都圏環境美化センター 代表取締役

斉京 由勝 氏

武笠 現在、ラベルは固形燃料になっているわけですが、PETボトルのように統一された素材で作っていただければ100%リサイクルできるはずです。そのあたりはメーカーにお願いしたいところです。

斉京 あとはごみの混入ですね。一般人の多くは「自販機横のリサイクルボックスはごみ箱」と認識しているようです。できるだけ飲み切ってから容器だけ投入するようにしていただくことは大きな課題です。飲み残しは工場の機械が傷んだり、悪臭の発生原因にもなりますから。

金子 私が子どもの頃に言われていたのは「分ければ資源。まとめてしまうとごみ」ということ。ぜひ皆さんと一緒に「キャップやラベルを取って、分けて出す」啓発活動を進めていければと思います。
 きれいな状態での分別を促進するためのアイデアを何かお持ちでしょうか?

ガラスリソーシング株式会社 代表取締役社長

赤坂 修 氏

赤坂 おそらくリサイクルボックスにごみが捨てられるのは、かつて市町村が置いていたごみ箱が街から消えたことが原因の一つと考えられます。これは行政と一緒に取り組んでいくべきことではないでしょうか。
 よって、リサイクルボックスに投入されたごみは産業廃棄物ではなくて一般廃棄物として、その工場がある市町村が引き取って処分するようにしてほしいです。

武笠 産業廃棄物として処分するよりも行政で焼却したほうがコストもかからないはずなので、メーカーが負担する再商品化費用も軽減できると思います。
 ただしそれを個社で主張しても、なかなか耳をかたむけてもらえません。今後は全容協の意見として行政にアプローチしていく方針です。

斉京 我々の新たな協会が、全国清涼飲料連合会、日本自動販売協会、そしてPETボトルリサイクル推進協議会の皆さんとともに行政に働きかけながら、最大限の啓発活動を行っていきたいですね。
 やはり行政の指導というのは非常に大切です。本年4月1日から施行されたプラスチック新法でも、家庭のプラスチック類のリサイクルを東京23区全体で行おうとしているのに、結局は家庭系だけ。やはり事業系まできちんとご指導していただくのが、分別を徹底させる一番の近道だと思います。

赤坂 もう一つ問題になっているのはプラスチックの海への流出ですね。やはり大きな原因はポイ捨てだと思います。ポイ捨てをさせないようにリサイクルボックスを自動販売機の横だけでなく、人がたくさん訪れる場所にもっと置いた方が良いのではないかと思っています。

金子 そのため工場に入荷するPETボトルの量は増えているのに資源化できる量は落ちています。軽量化が本当に正解なのかどうかは疑問です。

中間処理はすでに社会のインフラに

彩源株式会社 取締役社長

武笠 行男 氏

武笠 実は3年前に大型台風が発生した際、ガラスリソーシングさんから「人を貸してほしい」と依頼があり、当社のスタッフを連れて1週間泊まり込みで空き容器の選別をお手伝いしたことがありました。それがきっかけで災害防止協定を結ぶことになり、今回の全容協を発足することにもつながっています。

赤坂 あの時は停電が続いて工場が回せなくなりました。電気の復旧がいつになるかも見えない状況で、応援をお願いしたのです。災害が起こっても廃棄物は出続けます。我々の仕事はすでに日常生活の中にインフラとして入り込んでいると言えます。それだけに中間処理業者が互いに協力して対応する体制が必要だと思っていました。

斉京 災害発生時について言えば、行政による許可制度についても変えていただく必要性を感じています。許可とは廃掃法のもとでの処分契約になりますが、万一災害が発生した時には契約がなかったとしても、排出事業者に認めてもらえれば我々の工場に持ち込んでいただいても良い形にするべきかと。

PETボトルリサイクル推進協議会 会長

金子 友昭

武笠 そう思います。災害時に即応できれば、消費者に対してもメーカーに対しても「我々が安全・安心に処理します」ということをアピールできます。

赤坂 何より「中間処理というものは非常に大事」ということをまず世間にも知ってもらい、リサイクル率を高めていくべきではないかと思います。

金子 日本はPETボトルのリサイクルが進んでいると言われますが、中間処理を担う皆さんが汗をかいて取り組んでいただいていることが下支えになっているのは間違いありません。心から感謝を申し上げます。本日は貴重なお話をありがとうございました。

赤坂 修 氏

ガラスリソーシング株式会社 代表取締役社長

会社概要
本社:千葉県銚子市春日町740-1

1998年にガラスびんなどを再資源化行うべく創業。100億円を投資して混合容器国内最大規模の処理能力をもつ工場を成田に建設。選別精度の高い自動選別ラインを保有し、月間36,900トンの処理能力。関東一円から回収。事業系、市町村系も行う。

武笠 行男 氏

彩源株式会社 取締役社長

会社概要
本社:埼玉県深谷市折之口1958-3

1955年に鉄スクラップ業として設立、2010年に空き容器リサイクル工場完成・稼働開始。昨年4月、10億円を投資し、AIロボット選別機を導入した最新鋭のラインが完成。24時間稼働を目指しており、月間2,000トンの処理能力。

斉京 由勝 氏

株式会社首都圏環境美化センター 代表取締役

会社概要
本社:東京都足立区入谷9-21-19

1994年に創業、中間処理工場を3ライン(5月に1ラインをリニューアル)で月間2,474トンの処理能力。都内という発生地に近い利点があり、限られた敷地に収めるようライン構成を工夫している。自販機、オフィス回収を、東京、埼玉、神奈川、千葉のエリアで展開。

金子 友昭

PETボトルリサイクル推進協議会 会長

経歴
2021年6月にPETボトルリサイクル推進協議会 会長に就任。
現職:東洋製罐グループホールディングス株式会社 執行役員 サステナビリティ推進およびグループ品質保証担当。サーキュラーエコノミーを実現するという観点より皆さまとの情報交換を通して各ステークホルダーとの連携強化に努めて参りますのでよろしくお願い申し上げます。

TOP

  • BACK
  • NEXT
  • PETボトルリサイクル推進協議会