再生PET樹脂を使用している製品
（ボトル、つめかえ用パウチ、アテンションシール）
世界有数の消費財メーカー、ユニリーバ。400を超えるブランドからシャンプー、ボディウォッシュ、洗剤、食品などの製品を展開し、毎日190カ国、 25億人に愛用されています。
ユニリーバは、持続可能な成長こそが、同社が認める唯一のビジネスモデルと主張。どこよりも早くグローバルで環境問題に取り組んできました。日本法人であるユニリーバ・ジャパンでは、2019年秋より、再生PET樹脂を日用品のパッケージに導入し始めたことで大きな注目を集めています。
ユニリーバのビジネスモデルの中核にあるのが、2010年に導入された「ユニリーバ・サステナブル・リビング・プラン（USLP）」です。「サステナビリティを暮らしの“あたりまえ”に」を目指し、「すこやかな暮らし」「環境負荷の削減」「経済発展」という3つの分野で約50の目標を掲げて取り組んできました。環境負荷の削減の目標の一つとしてパッケージも削減してきましたが、プラスチック廃棄物問題がますます深刻化したため、2019年10月に従来の目標を拡充しました。それが、2025年までに下記を達成することです。
新たな目標を達成するために、ユニリーバ・ジャパンでは、パッケージに使用するプラスチックを再生素材に切り替える取り組みをしています。主力の3ブランド（ラックス、クリア、ダヴ）の昨年下半期の新製品から順次切り替えを開始しました。2020年までにPET素材のボトルを100％再生素材に切り替える予定です（技術的に切り替えが難しい着色剤などの添加剤を除く）。
「品質や使いやすさ、見た目の美しさはそのままに、より環境にやさしい素材ということで、食品・飲料パッケージにも使える品質の再生PET樹脂を使用しています。現在ボトル製品では本体の約90～95％が再生PET樹脂です。詰め替え用品はPET素材の部分をすべて切り替え、パウチの約10％が再生PET樹脂に。また、店頭での視認性を高めるために製品ボトルに貼付するアテンションシールの一部を、2018年から約80％再生PET樹脂を使ったものにしています」と語るのは、広報の新名氏。大きな変化のためには消費者の理解が大事だと考え、消費者向けイベントも実施しました。
日用品メーカーとしては国内最大級の規模で再生PET樹脂を使用することとなった今回の取り組み。パッケージの開発を主導した板垣氏は、「再生PET樹脂を製品に使用することに関しては、飲料業界が先行しており、日用品業界では大規模な取り組みがありませんでした。そのため、再生素材を使用するという弊社のグローバルの方針が決まった際、国内の再生PET樹脂メーカーにコンタクトする術さえありませんでした。ある展示会でようやく大きな再生PET樹脂メーカーの方と出会い、日用品に再生素材が使えるかどうかの考察から始め、協力をいただきながら進めてきました」と当初の苦労を語りました。
また、「飲料や特定調味料に使用されているPETボトルは、各自治体の分別収集や、店頭回収などより、同じ製品群にリサイクルされています。しかし、日用品のパッケージはプラスチック製容器包装として細かく分別されずに収集され、そのほとんどが日用品ではない別の製品群にリサイクルされているのが現状です。今後は、日用品のパッケージも分別収集し、再び日用品のパッケージに戻せるようなスキームを作ることが大切だと考えています。これが弊社の2025年までの目標の一つである”使用済みプラスチックの回収・再生を支援すること“にも繋がります」と語りました。
すでにアメリカなどでは店頭回収後にリサイクルして製品化を実現している事例もあるとのこと。今後、ユニリーバ・ジャパンでも行政や外部の方々とパートナーシップを組みながら循環型経済の実現に向けて進んでいきたいと考えています。
（2020年４月８日取材）
新名氏
板垣氏
