遠東石塚グリーンペット株式会社は、茨城県猿島郡境町の広大な敷地に本社と工場をおく、“ボトルtoボトル”などのメカニカルリサイクル事業を行う会社です。
2012年5月1日、台湾の遠東グループと日本の容器メーカー石塚硝子株式会社の合弁会社として設立され、再生PET樹脂を製造、飲料メーカーやボトルメーカーに販売しています。現在では、年間のベール処理量が5万トン、食品用再生PET樹脂生産量が3.5万トン(2019年)の日本最大級の再生PET工場となっています。さらに、2020年4月には、食品用と食品用以外の再生PET樹脂を年間4.5万トン生産する第二工場が完成します。9月からフル稼働する予定で、これにより年間8万トンのボトル用再生PET樹脂を生産することができるようになります。
生産した再生PET樹脂は、隣接する系列の日本パリソン株式会社をはじめ、他のボトルメーカ-、飲料メーカーに出荷しています。
再生PET樹脂は、ボトルにやや黄色みがあることが問題でしたが、同社の商品はバージンに近い色みのため、国内メーカーから高い評価を得ています。その秘密を安田社長に伺うと、「母体である台湾の遠東新世紀の本業はバージンPET樹脂の製造です。再生PET樹脂とはいえ、最終段階ではバージンと同じ品質レベルのものしか出荷できません。リサイクルをやっているという意識ではなく、使用済みPETボトルを原料に、バージンPET樹脂を作っているという認識でいるからです」とのこと。
さらに、遠東グループは、1988年にアジアで最初のPETボトルリサイクル工場を設立。 2009年にはアジア初のボトルtoボトルをスタートさせています。ここで蓄積された技術が、遠東石塚グリーンペットに継承され、品質に活かされていることも大きな要因です。
しかしながら、「当初は、台湾仕様の設備をそのまま日本に持ち込んでも日本ならではのPETボトルの種類や季節変動などによるトラブルが多く、日本のPETボトルに合わせて改善する必要があり、苦労したことが多かった」と安田社長は話します。
設備だけではなく、投入する原料を調査・研究し、そのノウハウを蓄積していくこと。また、1日100~200トンを生産する現場で品質管理をできる人的資源の向上も大きな課題であったため、リーダーの訓練などにも取り組んできました。
日本の家庭から出る市町村系使用済みPETボトルはキャップやラベルの除去も進み、非常にきれいな状態です。しかしながら、店頭や自販機などの事業系使用済みPETボトルはキャップやラベルがついたままで飲み残しなど多い状況で、たばこの吸い殻が入っていることもあります。同社は、工場設立時から汚れのひどい使用済みPETボトルでも、ボトルtoボトルに処理できる能力を持っていると言います。
「世界最高クラスの除染能力を有するプロセスを用いて、極限まで有害物質を除去することが可能です。さらに、お客様が望む材料特性に調整することもできます。これは、遠東石塚グリーンペットならではの設備です。また、現在日本全体で60万トンのPETボトルが流通し、回収されたもののうち20万トンは海外に輸出されていますが、国内リサイクルの原則から言うと自国のPETボトルは自国で処理できるようにしなければなりません。
当社は2030年に、日本国内で販売するバージンPET樹脂と同等量の使用済みPETボトルを回収することを目標に掲げています。」と安田社長。
PETボトルリサイクル周知のため、地元に根ざした活動に力を入れています。もともと従業員の家族向けに行っていた夏休みのオープンデーを、地域の人々にまで広げ、工場見学の機会を提供しています。新しい工場には見学コースも作ります。オープンデー以外の工場見学の申し込みを多数いただいていますが、小学校や市町村からの見学の申し込みは、柔軟に対応するようにしています。
また、地元境町のPETボトルを集めて処理することを目的に、石塚硝子のイベントに参加し、使用済みPETボトルを持ってきたら、石塚硝子製の食器を差しあげるなどのPR活動も行っています。
(2019年10月28日取材)
本社・工場: 茨城県猿島郡境町大字下小橋字蝉野880番地
設 立: 2012年5月1日
従業員: 109名[2020年1月現在]