(2018年10月10日取材)
長崎県北部に位置する佐世保市は、人口約25万人の中核市。かつて旧海軍の軍港として栄えた佐世保港には、現在、自衛隊や在日米軍の基地が置かれています。市内には国立公園の九十九島など景勝地も多く、九州有数の観光の街でもあります。
資源物は月2回、品目ごとに中身の見える袋に入れて、資源ステーションに出してもらいます。市内約2,400箇所のステーションから収集したPETボトルは、西部クリーンセンターの資源化施設で中間処理を行い、全量を指定法人に引き渡しています。2017年度の引き渡し量は508トン。市内では店頭回収を実施している事業者が少ないため、市の収集に出される量が比較的多くなっています。
可燃・不燃ごみは2005年から有料化しており、資源物を無料で収集することで、分別の推進をはかっています。
PETボトルの分別収集を始めた1997年は、ラベルの識別表示マークを見て選別を行う必要があり、ラベルは取らずに排出してもらっていました。ラベルを分別する自治体が次第に増える中、「他市から転入してきた方からは、『なぜPETボトルのラベルを取らないのか』とお叱りの電話をいただいたことも度々ありました」と山口(原)氏。
指定法人の引き取り品質ガイドラインに「容易に分離可能なラベル付きボトル」が追加されたこともあり、佐世保市でも、今後の安定的な引き取りと品質の確保、そして環境負荷低減のため、2018年4月からラベルをはがして出すルールに変更しました。
2018年6月に実施された新基準の品質調査では、ラベル付きPETボトルの割合は全体の約6%。100点満点中86点でAランクの評価を受けています。
分別ルールの変更は、テレビの市政だより、ラジオ、新聞、ホームページ、ごみ収集カレンダー等で市民へお知らせしましたが、「特段変わった広報はしていない」という岸川氏。中間処理の段階でも、手選別工程でラベル除去を行っていますが、そのために人員を増やすなどの対応はしていません。そのような中、短期間で高いラベル分別実施率を達成できたのは、「町内会とクリーン推進委員さんによる取り組みが有効に機能していることが大きな理由」とのことです。
市では、各町内にクリーン推進委員を委嘱。ごみ・資源ステーションの巡回や、出し方の指導・啓発などを行ってもらっています。分別ルール変更の決定後は、まず年一回実施しているクリーン推進委員の研修会での事前説明、ならびに町内会への通知を行いました。
「クリーン推進委員さんは普段から非常に熱心に取り組んでくださっていて、近所のステーションでも朝から中身をチェックしている姿をお見掛けします」と荒木氏。取り組み内容は町内会によっても異なりますが、ラベルがついたPETボトルは持ち帰るよう指導したり、ラベルがついたまま出されているものはその場ではがす場合もあります。家庭内のラベル分別率については把握できていませんが、市が収集を行う段階では、ほとんどのPETボトルがきれいに分別された状態になっているそうです。
市の環境部では、職員を清掃指導員として各地域に配置しています。「清掃指導員と、町内会やクリーン推進委員さんとのやりとりによって、指導・啓発の効果が発揮されていると思います」と山口(原)氏。荒木氏も、「長年積み重ねてきた信頼関係があり、『あんたたちがそがん言うとなら、せんばたい(あなたたちがそう言うなら、やらなければ)』というお気持ちになっていただいていることが一番大きい」と語ります。
クリーン推進委員は、行政と地域住民とのパイプ役。地域の方が日頃から真面目に分別に取り組んでいることに加え、日頃から清掃指導員と町内会・クリーン推進委員がよい関係を築けていることが、今回のルール変更のスムーズな周知と実行に繋がったと考えています。