PETボトルリサイクル推進協議会 広報誌 RING Vol.36

資源循環型社会形成を目指して

京都府京都市

(2018年1月22日取材)

1200年を超える歴史と伝統をもつ京都市。人口147万人の大都市であり、国内外から年間約5,000万人の観光客が訪れる観光都市、また人口の約1割が大学生という学生の町でもあります。

PETボトル・缶・びんは有料指定袋で混合収集

 家庭ごみの分別品目数は、政令指定都市で最多の26種類。そのうち8種類(5分別)は定期収集、18種類は拠点回収を実施しています。PETボトルは缶・びんとまとめて有料の指定ごみ袋に入れ、週1回、資源ごみ収集場所へ排出してもらいます。2016年度の収集量は3種合計で13,388トン。2施設で中間処理を行い、PETボトルは全量を指定法人へ引き渡しています。2016年度の引き渡し量は2,589トンでした。  有料指定袋制は2006年10月に導入しており、燃やすごみは1Lあたり1円、資源ごみは0.5円の手数料を設定しています。これには「全体のごみ量を減らそう、さらに適正に分別して出していただこう、という2つの狙いがあります」と新山氏。導入前後で、家庭ごみは全体で約5万トン減少し、PETボトル・缶・びんの分別実施率は約75%から約85%へと向上しました。

課題は処理量の維持と品質向上の両立

 混合収集のため、単独収集と比べるとPETボトルの品質は低くなる傾向があります。しかし、収集量の多さ、古い町並みが残る市内の道の狭さなどの事情で、収集方法を変えることは容易ではありません。
 品質調査では2010年度以降、2施設ともにAランク評価が続いていましたが、2017年度は南部資源リサイクルセンターがBランクとなりました。評価を下げた理由は、キャップ付きボトルです。同施設では、搬入されたPETボトル・缶・びんを磁力や風力で種類ごとに選別した後、それぞれの精選ラインで手選別を行います。PETボトルラインでは、中身の入ったボトルや異素材、カレット(割れたガラス)を除去しています。2016年度の処理量は約1,400トン。量が多く、手選別の作業量も多いことから、キャップやラベルを完全に除去するのは難しいのが現状です。
 「品質を維持するため手選別の作業員さんに頑張ってもらっていますが、市民一人一人の分別の意識を高めていくことで、より高い品質を目指すという作業員さんのやりがいにも繋がるのではないかと思っています」と植山氏。処理量を維持しながら品質も上げていくにはどうすればよいか、検討を続けているそうです。

ごみ半減をめざす「しまつのこころ条例」で分別を市民・事業者の義務へ

 京都市では2010年3月以降、ごみ受入量をピーク時の半分以下の39万トンまで削減する「ごみ半減」を目標に、3Rの取り組みを進めてきました。減量を加速させるため、2015年10月には「2R(リデュース・リユース)」と「分別・リサイクルの促進」を柱とする「しまつのこころ条例」をスタート。分別をそれまでの協力義務から義務へと引き上げ、市民・事業者に分別の徹底、減量の推進を呼びかけています。
 啓発活動については、「広く周知した上でターゲットを絞って重点的に、というスタンスです」と新島氏。2R・分別の啓発冊子「しまつのこころ得」は、場面別に「暮の巻・宴の巻・旅の巻」の3種類を発行し、市民のみでなく観光客もターゲットにしています。分別実施率が低い若年層に伝わりやすいよう啓発マンガを制作するなど、対象にあわせて手法も工夫しています。
 市民にごみ減量や分別・リサイクルへの理解を深めてもらうため、クリーンセンターや資源リサイクルセンターなどを見学する「ごみ減量エコバスツアー」も行っています。2016年度は114回実施し、参加者は約2,400人(10才以下は約500人)でした。
 各区役所には、地域の環境に関する拠点窓口「エコまちステーション」が設置されています。分別や減量などに関する相談の受付、環境活動の支援、出前授業などを行っています。また、COP3の開催を記念して設立された「京エコロジーセンター」も、市民の環境学習の拠点として活用されています。
 多様な施策の成果により、2016年度のごみ量はピーク時の約半分の41.7万トンまで減少。目標達成へ向けてラストスパートを迎えています。さらに次の段階として、資源物の品質向上についても、今後はより本格的に取り組んでいきたい考えです。

    京都市環境政策局
    循環型社会推進部
ごみ減量推進課 係長
          
新島 智之
新山 貴俊
循環型社会推進部まち美化推進課
市原 均
           適正処理施設部
    施設管理課 課長補佐
          
青木 志門
植山 尚樹
京都市南部資源リサイクルセンター
工場長
大賀 貞彦
(左から) 新島氏、新山氏

(左から) 新島氏、新山氏

(左から) 青木氏、植山氏、市原氏

(左から) 青木氏、植山氏、市原氏

PETボトルラインでの手選別の様子
PETボトルラインでの手選別の様子

PETボトルラインでの手選別の様子

引っ越し前のベール

引渡し前のベール

引渡し前のベール

啓発冊子「しまつのこころ得」
暮の巻・宴の巻・旅の巻

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