PETボトルリサイクル推進協議会 広報誌 RING Vol.36

資源循環型社会形成を目指して

島根県松江市

(2017年11月6日取材)

 山陰のほぼ中央に位置する松江市は、人口約20.4万人。宍道湖と中海に面し、松江城を囲む堀川をはじめ大小の河川が縦横に走る「水の都」です。

24時間365日利用できるリサイクルステーション

 PETボトル・缶・びんの飲料容器は、1998年から常設のリサイクルステーション(以下RS)で分別収集を行っています。RSはスーパーマーケットや公民館、ごみ集積所横など約500箇所に設置されていて、24時間365日いつでも利用することができます。この収集方法は市民の生活に根付いており、「スーパーに行くときは、PETボトルやびんがないか、必ず確認して持っていくのが習慣になっています」と伊藤氏。
 協力店舗では飲料容器の収集を市のRSに一本化し、店舗が駐車場などのスペースを提供、市が収集用のカゴを設置しています。新規出店時に市へRS設置の依頼がきたり、店舗側がRSの設置場所を独自に整備してくれるケースもあるそうです。
 2016年からは、事業所の従業員が飲んだPETボトルなどもRSに出してほしいと呼びかけています。「これまでは家庭で出た飲料容器のみ受け入れていましたが、事業系一般廃棄物には可燃・不燃の区分しかなく資源化が難しいので、RSに出してもらうことで、少しでもリサイクル率を上げていきたい」と岩田氏。

PETボトルの品質は全項目A評価を獲得

 PETボトルは、キャップとラベルをはずして、RSのカゴに直接出してもらいます。「啓発の際によく言うのは、“RSが白く見えるほど素晴らしい”ということ。カラフルに見える場合はラベルやキャップがついていて、PETボトルのみだと白く見えますよと説明しています」と野津氏。

 各RSからは、収集量に応じて1日2回~週2回程度、運搬を行います。2016年度のPETボトル回収量は484.8トンで、そのうち指定法人への引渡し量は397.5トンでした。市町村合併の影響もあり、収集を開始した当初と比べると約4倍の量になっています。品質については、「啓発の効果が高く、PETボトルの約80%はきれいな状態の“合格品”です。残りの20%は手選別でキャップ・ラベルを除去しています」と山本氏。指定法人の品質調査結果は毎年Aランクで、2017年度は全項目A評価でした。
 指定保管施設の西持田リサイクルプラザには、市内の小学4年生を中心に年間約1,500人が見学に訪れており、実際に現場を見てもらいながら啓発を行っています。2017年からは、教育委員会と連携して小学校での出前授業も始めました。「子どもに伝えると家族にも広まるので、効果は一番あると思います」と岩田氏。授業をきっかけに分別をするようになったという家庭から、手紙が届いたこともあるそうです。
 大人向けの出前講座は、参加者が関心の高い層に偏ってしまう傾向がありますが、夜間や土日でも、希望者が1人や2人でも実施することで、さまざまな層の方に話を聞いてもらう機会が増えてきたといいます。

「リサイクル都市日本一」への思いと課題

 現在の環境政策が本格的にスタートする契機となったのは、2000年に松浦市長が就任してすぐ、「リサイクル都市日本一」をスローガンに掲げたことでした。市民参画を実現するためのテーマとしてごみの問題に着目し、江戸時代の人々のごみを出さない暮らしを見習おう、と提案したのです。以来、市民・事業者・行政が協力してリサイクルに取り組んできました。
 現時点での具体的な目標は、「2021年までにリサイクル率34%を達成し、県庁所在地でリサイクル率1位になる」こと。2011年度のリサイクル率は33.5%でしたが、可燃ごみへの資源の混入などにより、2016年度には29.2%となっています。「指定ごみ袋の価格は、可燃ごみより資源の方が安くなるよう設定していますが、今後はもっと差をつけることも考えています。分別すれば負担が減ることを理解していただき、資源として出される量を増やしていければ」と岩田氏。さらに、「可燃ごみの袋は不透明なので次はもっと薄い色に変えて、中にPETボトルが入っていたら収集しない、そのくらい厳しくしていかなければ、34%は達成できないと思っています」。

松江市環境保全部
リサイクル都市推進課 課長
岩田 光弘
同課 家庭ごみ係長
野津 享平
同課 清掃業務係
小谷 靖信
施設管理課
伊藤 明   
西持田リサイクルプラザ 場長
山本 洋二
(左から) 岩田氏、伊藤氏

(左から) 岩田氏、伊藤氏

(左から) 山本氏、野津氏、小谷氏

(左から) 山本氏、野津氏、小谷氏

リサイクルステーション
リサイクルステーション

リサイクルステーション

リサイクルステーションから収集されたPETボトル

リサイクルステーションから収集されたPETボトル

手選別の様子

手選別の様子

引っ越し前のベール

引渡し前のベール

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