RING PETBOTTLE RECYCLING

Interview さらなる進展が期待されるPETボトルリサイクル ―主管3省に関連業界への提言を聞く― 農林水産省

「伝わる」広報が重要に

容リ法、5年前の改正で一段と成果

近藤 初めに、容リ法改正後のこの5年間について、どのように総括しておられるかお話ください。
長野 容リ法制定時の喫緊の課題であった最終処分場の延命化について着実に成果が得られ、その意味では、容リ法の効果ありと判断しています。
 法体系の柱である循環型社会形成についてですが、5年前の容リ法の見直しによって、循環基本法の基本原則に則り、リサイクルよりもリデュース・リユースを優先することが確認されましたが、小売業における容器包装多量排出事業者に定期報告を義務づけたことも一定の成果がでているのではないでしょうか。また事業者自らが実施する3R推進自主行動計画等により年度毎に3Rの進捗報告が行われる様になりましたが、使用量を把握することが排出の抑制(リデュース)につながりますので、農水省では、使用量の把握が行われることがとても重要なことと認識しています。
近藤 PETボトル協議会の樹脂統計によると2011年は清涼飲料の液量が増えたにもかかわらず、PETボトルの樹脂量が減りました。PETボトルのリデュースの成果が出たのではと分析しています。

写真:長野 麻子 (ながの あさこ)氏

長野 麻子 (ながの あさこ)氏

農林水産省
食料産業局
バイオマス循環資源課
食品産業環境対策室
室長

1994年農林水産省入省。1997年郵政省放送行政局、1999年フランスへ留学、2001年総合食料局食品産業企画課企画官、2002年大臣官房企画評価課バイオマス・ニッポン総合戦略検討チーム、2003年大臣官房国際部国際調整課課長補佐、2005年大臣官房秘書課、同年消費・安全局動物衛生課課長補佐、2006年㈱電通へ出向、2008年大臣官房情報評価課企画官、2009年大臣官房秘書課課長補佐、2010年水産庁水産経営課課長補佐、2011年内閣府食品安全委員会事務局総務課課長補佐を経て2013年1月より現職。

長野 基本原則では、3Rの中でリデュースとリユースを優先することになっていますからね。とは言え、容器包装のように私たちの生活上欠かせないものについては、限りある資源の持続的活用という観点からリサイクルしていくのが望ましいと言えます。要は、総合的な判断で決めていくということではないでしょうか。最近は、軽量化された柔らかいPETボトルも一般消費者に認知されてきていると思います。
 現在農水省では、食品の中でまだ食べられる状態にあるものが捨てられてしまう食品ロスが多い点に注目しています。そこでいま、いろいろな方々との間で流通の商慣習見直しについて話し合いを進めているところです。そうした中で、容器包装の技術開発等を踏まえ賞味期限自体を延ばしましょうという話もあります。また、東日本大震災を機に、賞味期限の長いものを家に備蓄しておこうという機運も高まっています。
 これからの食品包装は、賞味期限延長とリデュースという相反する課題を乗り越えていかなければなりません。
近藤 当推進協議会では、更なる技術開発が必要と認識しています。

理解できる入札回数の複数化

近藤 容リ協は「PETボトル入札制度検討会」を立ち上げました。この件についてはどのような見解をお持ちでしょうか。
長野 PETのバージン樹脂の市況変動に対応するため、例えば入札回数を複数回にすべきという主張も理解できます。要は、再商品化事業者の中で不公平が生じず、きちんとリサイクルされる持続可能な制度を考えていくことが必要だと思います。
近藤 この問題は、自治体の独自処理量が多いまま推移しているため再商品化事業者の必要原料が十分に確保できないことも深く関連しており、行政としての的確なご指導をお願いしたいのです。
長野 容リ法では “分別収集された使用済み容器包装は指定法人に円滑に引き渡すことが必要”と明記されています。そういった事実や再商品化事業者の窮状、国内で市民の協力で分別収集された資源が海外流出している状況などを自治体だけでなく一般市民にも広く知らせることが大切ではないでしょうか。
近藤 当推進協議会では、ボトルtoボトルを水平リサイクルまたは実質的リユースと位置づけ、今後大いに普及させていきたいと考えています。
長野 ボトルtoボトルは資源が国内で循環し、わかりやすいリサイクルとして、今後さらにリサイクル市場を活性化させる可能性を秘めたシステムと認識しています。食品安全性と経済合理性の裏づけがあれば、大きく広がっていくのではないでしょうか。

「伝える」にとどまらず、高齢化社会も念頭に

近藤 PETボトルリサイクルの広報・啓発活動についてご意見をお聞かせ下さい。
長野 いまは市民の多くの方が当たり前のことのようにPETボトルのキャップを取ってラベルを剥がして、洗ってつぶして出していますよね。これはまさにPETボトルリサイクル推進協議会の皆さんのご努力の賜物と言えます。皆さんが消費者や自治体等と懸命にコミュニケーションを取ってきたことが大きいと思います。
 では次のステップとして何を考えていくかということですが、やはり高齢化社会というものを十分念頭に置いていくことが大切ではないでしょうか。それと、広報活動では「伝える」にとどまらず、「伝わる」広報を心掛けることも重要なポイントと言えます。伝われば、そこから新しい行動が生まれるということになりますからね。

容リ法見直し、総合的な検討で

近藤 最後に、まもなく、容リ法の見直し審議が始まると思われますが、どのようなスタンスで臨まれるのでしょうか。
長野 前回の見直しでは、経産省の産構審、環境省の中環審と平行して、懇談会を開催しました。現時点で農水省としていつ懇談会等を開くかは未定ですが、実効ある議論ができるよう準備していきます。農水省は容器包装では、食の安全性確保、食品ロス削減との関係、植物由来のバイオPETなどのバイオプラスチック、製紙原料となる国産材・間伐材など国内森林資源の活用、食品スーパーの店頭回収等々に関わる立場として、今回の容リ法見直しについて、総合的に検討できればと考えています。
近藤 貴重なご意見を有り難うございました。

(2013年4月3日取材)

TOP