RING PETBOTTLE RECYCLING

Interview さらなる進展が期待されるPETボトルリサイクル ―主管3省に関連業界への提言を聞く― 環境省

優れた主体間連携の構築を

容リ法、よりよいものにするために

近藤 初めに、容器包装リサイクル法(以下 容リ法)の、これまでの成果と今後の見直しの議論について、お話をお伺いしたいと思います。
永島 現在の容リ法は、国際的に見ても非常に高度なリサイクル法と言ってもよく、また基本的にうまく回っていると考えています。それをさらによいものにしようという観点から見直し作業を進めることになります。
 例えば、3Rの中で相対的に遅れているリデュースやリユースを今後容リ法の中でどう扱っていくか、水平リサイクルと言われるボトルtoボトルなど質の高いリサイクルをいかに広げていくか、容器包装廃棄物の回収量をどのように増やしていくか、さらには東日本大震災や原発事故を踏まえてエネルギー問題との接点をどう考えていくかなど、検討課題は実に多岐にわたっています。
近藤 他方、いまの容リ法に関連して申し上げれば、市民・消費者も分別排出という重要な役割を負っているという点を一人でも多くの人々に認識してもらうための啓発活動の展開が重要と考えています。

写真:永島 徹也 (ながしま てつや)氏

永島 徹也 (ながしま てつや)氏

環境省
大臣官房廃棄物・リサイクル対策部
リサイクル推進室
室長

1969年奈良県生まれ。1992年に環境庁に入庁後、地球温暖化対策、自然環境保全、水・大気環境保全、水俣病問題など様々な分野の業務に携わる。印象に残る仕事として、グリーン購入法の制定、グリーン家電エコポイント事業の立ち上げ、小型家電リサイクル法の施行などがある。5月11日付け環境省放射性物質汚染対処特別措置施行チーム法施行総括チーム次長に異動。

永島 それは非常に重要なポイントですね。消費者の皆さんには、自分たちが分別排出にきちんと協力すれば環境保全や石油資源の節約などが大きく前進するという点をぜひしっかり認識して頂きたい。そのための啓発活動は大変重要であり、国の重要課題でもあります。

無視できない樹脂価格の変化

近藤 一方、私たちが現在直面している大きな問題の一つに、市況の下落による再生PET市場の混乱があります。公益財団法人日本容器包装リサイクル協会(以下 容リ協)でも事態を重視し、入札制度検討会を立ち上げることになりました。
永島 確かに、バージンPET樹脂の価格が急激、かつ、大幅に下がったりするとリサイクル事業者が直接大きな影響を受けることになるので無視できない問題です。ですから改善の方策を入札制度という観点から考えていくことは大切であると思います。
 ただしその場合も、PETボトルの新技術開発や普及を推進していくにはどうしたらいいのかといったことなども考えながら論議していかれるよう期待します。要は、PETボトルのリサイクルシステムを安定的に回していくにはどうすればよいか、どんなことが必要かといったことを念頭に置いて論議していくことだと思います。ついては、短期的な課題と中長期的な課題とを整理した上で、これまでの枠組みの中で変えられる部分と審議会レベルで容リ法全体の中で考えていく必要がある部分とを分けて検討していくことが大切ではないでしょうか。

市町村のリサイクル、より適正に

近藤 私たちにとってのもう一つの大きな悩みは、市町村によるボトルの独自処理量が減らないことです。
永島 容リ法の基本方針では、かねてから市町村に対して、独自処理する場合にどのような事業者に引き渡し処理しているのか把握して、市民にきちんと知らせるように求めています。リサイクルシステムを適正に回していくのに必要なことだからです。
 しかし実際には徹底を欠いていて実施していないところがあるのでそのような市町村名を昨年初めて公表しました。そしてなぜ基本方針がしっかり守られていないのかを調査したところ、担当者が市民への周知の必要性なり重要性なりをはっきり認識していないことによる面が大きいということもわかりました。
 したがって今後は、市町村の理解を深めていくためにこれまで以上に普及啓発活動に力を入れていきたいと考えています。また、引渡し価格が短期的に多少不利に傾いたとしても、容リ協ルートに円滑に引き渡される方が市町村で独自処理するよりも日本の国内循環にとってプラスになるとともに、市町村にとっても安定的なリサイクルにつながるという点もしっかり訴えていきたいと考えています。

大切な「主体間連携」

近藤 最後に、私たち協議会がこれからの活動をより効果的に進めていくための方策についてもお考えをお聞かせ頂きたいと思います。
永島 大切なことは優れた主体間連携の構築ではないでしょうか。何の為に連携するのかという目的意識を最初にはっきりさせたうえで取り組んでいけば自ずと成果が上がっていくと思います。これからの社会の担い手である若者の理解を深めるにもやはり主体間連携によるPR活動が有効でしょう。
 主体間連携と言えば、3月にハノイで開催された環境省が係わる「アジア3R推進フォーラム」に、貴推進協より参加頂き、“日本では関係主体が連携したからこそ回収からリサイクルまでの高度なシステムができ上がった”と発表され、参加各国にかなりのインパクトを与えたことは、非常に有意義であったと思っています。
近藤 本日は貴重なご意見をいろいろと有り難うございました。

(2013年3月29日取材)

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