RING PETBOTTLE RECYCLING

座談会 流通事業とPETボトルの国内循環

使わなくて済む容器包装は使わないように

近藤:本日はお忙しいところありがとうございます。
さっそくですが、ユニーさんが流通事業者として、これまで環境対応で目指してきたことはなんでしょうか。

百瀬:ユニーでは使わなくて済む容器包装は極力使わないようにしています。2004年から2007年にかけて再商品化委託料を約3億円程払っていましたが、今年はレジ袋等の削減で約1億5,000万円程度になりました。ただ、使用済み容器包装の店頭回収では、PETボトルのように毎年、増えているものもあります。例えば、浜松市の大型店舗では、PETボトルが年間約70トン集まっています。これは、行政回収より多いんじゃないでしょうか。行政の資源回収は月に1~2回ですが、スーパーマーケット(以下 スーパー)では、開店日はいつでも回収しています。よくあるのは、空になったPETボトルやトレイなどをきれいにしてマイバッグに入れて持ってきて、店頭で出してから買い物をするというスタイル。おかげさまで現在、トレイ、アルミ缶、PETボトル、牛乳パックなどほとんど有価で取引しています。

写真:百瀬 則子(ももせ・のりこ)

店頭回収をいちはやく始めたユニー

櫻井:店頭回収は、いつごろ始められたのでしょうか。

百瀬:ユニーでは、容器包装リサイクル法(以下 容リ法)が始まる20年以上前、1970年代からです。名古屋市の消費者団体から「レジ袋にしろ、トレイにしろ、世の中にごみになるものをだしているんだから、集められるものは集めて、リサイクルしてください」と言われて、牛乳パックから始めました。PETボトルは、非常に難しかったんです。理由は2つあって、1つはリサイクル料金。計算では一般可燃ごみの倍近い料金になりました。もう1つは法律での廃棄物輸送規制の問題があります。
そして2005年に愛知万博が開催された頃から、500mlのお茶が出て、PETボトルが急激に伸びたんですね。そこで、「名古屋市内の店舗は市が回収するので、ぜひ集めて欲しい」と市から言われてPETボトルの回収を始めたんです。

写真:櫻井 正人(さくらい・まさと)

少し大きい規模のスーパーで、一週間で1トン集まりました。名古屋市が週3回回収する約束だったのですが、それでは間に合わないので、今では週に4~5回回収されています。

櫻井:容リ法ルートで行っているということですか。

百瀬:そうです。名古屋市の30店舗くらいはそうですね。

近藤:名古屋市にとってはうれしいことですね。

百瀬:そうでしょう。ユニーは商品物流の帰り便を利用して資源物を載せていますから、輸送費はカウントしていないんです。「この方が合理的ですよ」と市に言っているんです。ユニーの店頭回収で出るものは、ラベルもはずし、キャップも取り、中身も洗われていて非常に良い状態。トリプルAに近いのだそうです。
ユニーが一年間に集めた量は、全店舗で1,755トンです。お客様には店頭ポスターで“この店で集めたPETボトルは○○トンです”と告知しています。
でも、今でも関東ではまったく集めていません。市や県が「それは廃プラだから輸送するには登録が必要」と言って神奈川県にある物流センターに集められないんです。

写真:近藤 方人(こんどう・かとうど)

近藤:それは非常に重要な情報です。有償化されているので、市町村がダメだというケースは無いものと思っていました。

百瀬:ですから、容リ法を見直そうという今、回収ルートの中に、税金を使って市民から回収しようというルートと、事業者が自主回収するルートがあってもいいんじゃないのかと。「これが一番有効なルートである」ということを、国や協議会などが決めたら私たちはそれに従っていくでしょう。

写真:左から櫻井 正人(さくらい・まさと)、百瀬 則子(ももせ・のりこ)

一番有効なリサイクルを目指して

百瀬:ユニーの中で私がこれからやりたいなと思っているのは、「環境負荷が少なく経済的に一番有効なリサイクルルート」を確立し、それを消費者に開示すること。そしてプライベートブランド(以下PB)商品で実現しようとしているのは、自社でリサイクルループが完結できて、私たちの目が届く範囲だからです。

櫻井:ユニーさんの店頭回収は、CSR※の観点からということですか。

百瀬:そうですね。例えば回収されたものの保管やリサイクル物流のコストを全部カウントしたら、たぶんすごい金額になると思うんです。先ほどの70トン回収するような店は、ほとんど30分おきに、担当者が、大きなコンテナで回収して、普通なら商品を置く倉庫にコンテナを置いています。本当に、目的はCSRだけなんです。

店頭回収推進のために法整備を

近藤:ボトルtoボトル(以下BtoB)のリサイクルに魅力を感じますか。

百瀬:いいと思います。そういう仕組みができていれば、参加したいですよね。国内循環ですから。

櫻井:店頭回収は、品質が高いことは間違いない。したがって国内で循環させなければもったいない素材です。今後、店頭回収を増やしていただくための準備として、一つは法整備がありますね。

百瀬:それが一番重要です。今は「廃棄物処理法違反ですよ」と言われるんです。でも国の解釈ではダメとは言ってないんですが、一部の自治体ではかたくなに“これが正しい”という基準があるようです。廃棄物に関して、私たちは店頭回収はできても運ぶことはいけないことになっている。隣の市に持っていくのも法律違反です。でも市町村は名古屋市みたいに集めて欲しいはずなんです。容リ法の対象物については、廃棄物ではなく輸送可能な“資源”と言って欲しい。だって容リ法を作って資源を有効利用しようとしたのは国ですから。

櫻井:関東でPETボトルだけダメという話でしたが。

百瀬:それは、「輸送の方法を合法化するためには、どこに持って行って何にしたらいいのか」というガイドラインがあればいいんです。ユニーとしてはこれで利益を上げるわけではなく、企業の社会的責任として人と物とお金を使って社会に役立てようとしているのに、それをダメと言われてしまってはね。

櫻井:今度の容リ法の見直しではそれを強く訴えていくということですね。

百瀬:そうですね。一番のポイントだと思っています。今後、店頭回収の有効性をぜひ推進協さんで言ってもらいたいですね。また、できるなら、飲料メーカーがBtoBのボトルだと商品に明示して販売すればいいと思うんです。もしくは大手流通のPB商品のボトルに使ったらどうかということを提案したらいかがでしょう。その方がより国内循環でしょう。そして、「バージンPET樹脂に10%再生PET樹脂を入れれば、これくらい石油資源の節約ができます」という情報があれば、ぜひ出していただきたいですね。

櫻井:ちなみに、PETボトルの店頭回収は、日本全体の小売流通で回収可能な量を100とすると、どのくらいまで来てると思いますか。

百瀬:まだまだだと思います。店舗によっては、やってないところがあります。PETボトルは自分の手で集積センターなどに持っていかなくてはならず、手間がかかります。直接回収してくれる業者があれば、ありがたいですよ。ですから、名古屋市のように、「回収しますよ」と言ってくれるところは、小さいところでもやってるんです。

櫻井:循環型社会を目指そうという中、高効率でリサイクルをしようとしているのになぜそこを否定するのか。流通事業者に対しては、「専ら物」扱いとして廃棄物処理法の規制から除外してほしいということですね。

環境学習を活用して店長を教育

百瀬:ユニーでは、子供の環境学習を全店舗で開催し、店長に教育リーダーを任せてます。店長がリーダーになるのはすごくいいことなんです。なぜかというと、店長は環境保全活動について結構知らないことがあります。子供に説明するためには、自分のところで集めたPETボトルが、一週間で何㎏あるのか知らないと言えないし、自分のところで売っている容器包装の中に、バイオマスプラスチックがあるということを説明しないといけないから、一生懸命勉強するんです。そうして店長が認識してくると、そこに携わっている人たちも、「これは大事なことなんだ」と意識する。使用済み容器包装もただ単に片づけなければいけないから裏に持っていくのではなくて、「これは資源としてきちんとリサイクルしている」と、分かってくれる。担当者が、環境にいいことをやっているんだという気持ちになってもらうことが、結構大きいんです。そして、説明を受けた子供たちが、親兄弟に言ってくれれば、社会に環境意識が広がっていくかなと、思っています。

近藤:店長から従業員に、そして子供たちにと、すそ野が広がっていくわけですね。最終的には消費者の環境意識が一番大事ですからね。私たちも、ご一緒にお手伝いさせていただきたいと思います。
本日はお忙しい中、貴重なお話の数々、ありがとうございました。

写真:ユニーの環境学習

ユニーの環境学習

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