「リサイクル都市日本一」をめざす松江市と、国内外から多くの観光客が訪れる古都・京都市について工夫を凝らした市民への啓発活動をご紹介します。
松江市では、24時間365日いつでも利用できる常設のリサイクルステーション(以下RS)でPETボトル・缶・びんの分別収集を行っています。
設置場所はスーパーマーケットや公民館、ごみ集積所横など約500箇所。スーパーの場合は買い物ついでに出せるため特に利便性が高く、収集量も多くなっています。協力店では飲料容器の収集を市のRSに一本化しているのが特長で、店側が駐車場などのスペースを提供、市が収集用のカゴを設置しています。新規出店時に市へRS設置の依頼がくるケースや、店側がRSに屋根をつけるなど独自に整備を行っているケースもあり、事業者との協力関係が分別収集を支えています。
各RSからの運搬は、収集量に応じて1日2回~週2回程度。2016年度のPETボトル回収量は484.8トン、そのうち指定法人への引渡し量は397.5トンでした。
PETボトルはキャップとラベルをはずして、RSのカゴに直接入れるのがルールです。啓発の際には、RSがカラフルに見えるときはキャップやラベルが残っていることを説明し、「RSが白く見えるほど素晴らしい」と分かりやすく伝えています。また、きちんと分別すれば市の歳入が増えることを話すと、市民の理解や協力を得やすいといいます。啓発活動の効果は高く、収集されたPETボトルの約80%はきれいな状態の“合格品”。残りは手選別でキャップ・ラベルを除去しています。品質調査結果は毎年Aランクで、2017年度は全項目A評価を受けました。
2000年より「リサイクル都市日本一」を合言葉に環境政策を進めてきた松江市。一般廃棄物のリサイクル率は2011年度には33.5%でしたが、可燃ごみへの資源の混入などにより、2016年度には29.2%となっています。現在は「2021年までにリサイクル率34%達成」を目標に据え、分別の推進を図っています。
施策のひとつとして、2016年からは、事業所の従業員が飲んだPETボトルなどもRSに出してほしいと呼びかけを始めました。事業系一般廃棄物には可燃・不燃の区分しかなく資源化が難しいため、RSに出してもらうことでリサイクル率の向上に繋げていくのがねらいです。
(取材日:2017年11月6日)

設置されているリサイクルステーション
京都市の家庭ごみの分別品目数は、政令指定都市で最多の26種類。そのうち定期収集を行っているのは8種類(5分別)です。PETボトルは缶・びんと一緒に有料の指定ごみ袋で排出してもらい、週1回、資源ごみ収集場所で収集します。2016年度の収集量は3種合計で13,388トン。2施設で中間処理を行い、PETボトルは全量を指定法人へ引き渡しています(2016年度の引き渡し量は2,589トン)。
施設では、PETボトル・缶・びんを磁力や風力で種類ごとに選別した後、精選ラインで手選別を行います。PETボトルのラインは処理量が多く、中身の入ったボトルや異素材、カレット(割れたガラス)を手作業で除去していることから、キャップやラベルまで取り除くのは難しいのが現状です。品質調査ではAランク評価が続いていましたが、2017年度はキャップ付きボトルが原因で1施設がBランクとなりました。処理量を維持しながらいかに品質を上げていくのかが、大きな課題となっています。
有料指定袋制は2006年10月から導入しており、導入前後で家庭ごみは全体で約5万トン減少し、PETボトル・缶・びんの分別実施率は約75%から約85%へと向上しました。
また2010年3月からは、ごみ量をピーク時の半分以下の39万トンまで削減する「ごみ半減」を目標に、3Rの取り組みを進めています。減量を加速させるため、2015年10月には「2R(リデュース・リユース)」と「分別・リサイクルの促進」を柱とする「しまつのこころ条例」をスタート。分別をそれまでの協力義務から義務へと引き上げ、市民・事業者に分別の徹底、減量の推進を呼びかけています。
環境問題の専門家からの指導や、民間団体・事業者の協力を受けながら多様な政策を展開してきた結果、2016年度のごみ量は41.7万トンまで減少しました。目標達成へ向けてのラストスパート、さらに次の段階として、資源物の品質向上の取り組みが、今後も注目されます。
(取材日:2018年1月22日)

2R行動ガイド「しまつのこころ得」
暮の巻・宴の巻・旅の巻の3種類を発行