8.事業者の取り組み

防衛省 市ヶ谷地区の取り組み

画像:防衛省 市ヶ谷地区の取り組み

明治から現在へ、日本の防衛の中枢を担う市ヶ谷地区

防衛省市ヶ谷地区(以下、市ヶ谷地区)の歴史は、旧尾張藩の上屋敷跡地に明治7年、旧陸軍士官学校が開設されたことに始まります。現在、防衛省本省をはじめ、統合・陸上・海上・航空幕僚監部などを擁する我が国防衛の中枢となっています。上屋敷跡地である約25万m2の広大な敷地には、約1万人の職員が我が国の安全を守るため、日夜、任務の遂行に専念しています。今回は、我が国防衛の最後の砦である防衛省市ヶ谷地区内における使用済みPETボトルの収集の概要をご紹介します。

市ヶ谷地区のごみ排出量

防衛省の担当者によると、市ヶ谷地区で排出されるごみの総排出量は年間約2,000トンで、その2%弱に相当する34トンがPETボトルで占められており、これらPETボトルは事業系廃棄物として処理されているとのことです(他の内訳は、紙類1,400トン、生ごみ190トン、弁当ガラ80トン、びん20トン、缶30トン、産業廃棄物220トン)。ただし、地区内の自販機やコンビニに設置された回収ボックスへ排出されるPETボトルは含まれていません。また、自衛官が居住する隊舎と呼ばれる施設から排出されるPETボトルも含まれていません。回収ボックスへ排出されたPETボトルは事業系廃棄物として処理され、一方の隊舎からの排出物は生活系廃棄物の一つとして新宿区によって回収されているからです。

PETボトルの分別方法と周知活動

市ヶ谷地区で排出されるごみは、「リサイクルごみ」、「可燃ごみ」、「廃プラスチック類」、「金属類」、「ガラス・陶磁器類」、「弁当ガラ」、の6種類に分別され、PETボトルを含む「リサイクルごみ」はさらに9種類に再分別されます。このルールに沿って、全てのごみは地区内2ヶ所の集積所に集められます。平日の8:30~11:00、13:00~15:00の時間内であればいつでも持ち込むことができます。持ち込まれたごみが正しく分別されているかどうかは委託先の担当者がその場でチェックし、同時に正しい分別の指導もしています。このため、誤った分別を繰り返す人はいないそうです。
PETボトルについては、ラベルを剥がして軽くすすいでから「リサイクルごみ」に排出するよう周知しています。集積場には透明なポリ袋が張られたバケツ状の大きな回収ボックスが並んでおり、PETボトルで一杯になると袋を閉じて1ヶ所にまとめられます。
このように徹底した分別を実施している市ヶ谷地区ですが、人の入れ替わりが多い点が特徴の一つです。防衛省・自衛隊の職員の勤務地は、我が国防衛の観点から、全国津々浦々に及んでおり、また、防衛省本省という組織の性格上、全国各地から人事異動によって移ってくる職員が多く、定期異動期には相当数の職員が入れ替わるとのことです。異動してくる職員に対しては、業務用パソコンのメールなどを利用して廃棄物全体の分別方法の周知徹底を図っているとのことです。
分別されたPETボトルは、回収事業者によって週2回外部に搬出されており、同地区では、約6年前からPETボトルを回収事業者に売却しています。担当者によると、使用済みPETボトルをごみではなく有価物として位置付け、わずかな金額でも国庫に入れることができればなお有意義と考え、売却を始めたとのことです。古紙や段ボールも同じ考えからリサイクルを促しており、市ヶ谷地区での取り組みは今後も注目されます。

画像:集積場のバケツ状の回収ボックス

集積場のバケツ状の回収ボックス

画像:回収ボックスで回収されたPETボトル

回収ボックスで回収されたPETボトル

市ヶ谷地区での環境活動

防衛省では毎年度、グリーン購入の方針を定めており、その方針は全国の基地に適用されます。市ヶ谷地区では同方針に基づき、ほぼ100%グリーン購入を達成しており、そうした中で、施設の維持管理を行う部署ではPETボトル再利用品の一つである作業服を使用しているとのことです。また、市ヶ谷地区では、照明器材のLED化(外灯)、人感センサー設置による点灯時間の短縮(廊下・階段・便所など)、屋上緑化や遮熱フィルムによる断熱効果を利用した冷暖房の節減、庁舎における室温の集中管理、太陽光発電設備による自家発電の導入などの取り組みなど、環境に配慮した取り組みを一つ一つ着実に進めています。
他にも、防衛省では6月の1ヶ月間を環境月間、そして秋季の1週間を環境週間と定め、職員一人ひとりが環境保全の重要性を認識し、そして行動の契機とするべく、様々な行事を市ヶ谷地区を始めとする全国の各基地などにて実施しています。
このように、防衛省では、国の安全の確保のため、自衛隊の任務遂行に鋭意励んでいる一方で、環境保全や環境負荷低減の取り組みにもしっ集積場のバケツ状の回収ボックス かりと配慮を行っている点が印象的でした。

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