6.Recycle(リサイクル)

(5)PETボトルの回収における事業者の取り組み

―東京大学 本郷地区キャンパス―

画像:東京大学 本郷地区キャンパス

使用済みPETボトルの回収には、家庭から排出されたものを自治体が回収するほかに、事業系で排出されたものの回収もあります。この度は、事業系の取り組みである国立大学法人東京大学(以下、東京大学)本郷地区キャンパスの事例をご紹介します。

東京大学本郷地区キャンパスの一般廃棄物

東京大学本郷地区キャンパスは1877年に創設された日本で最も長い歴史を持つ国立大学の施設であり、約54万㎡の広大な敷地とおよそ3万人もの構成員を有する都内最大級の施設のひとつでもあります。

大学という施設の特徴として紙のごみが非常に多く、廃棄物の中で半分を占めています。「紙」は新聞、コピー用紙類、雑誌・雑がみ、段ボールさらにシュレッダーにかける個人情報・事務書類の5種類に分別しています。「紙以外のごみ」に関してはリサイクルされる使用済みのPETボトル、飲料缶、ガラスびん、プラスチックの4種類と、リサイクルされない可燃ごみ、不燃ごみの2種類の計6種類の分別になっています。
使用済みPETボトルの占める割合は全体の約3%未満ですが、この数値には清涼飲料自動販売機横の空容器入れの数値は含んでいません。

画像:紙以外のPETボトルなど6種類の分別

紙以外のPETボトルなど6種類の分別

「東京大学ごみ宣言」とカート方式の導入

本郷地区キャンパスのごみの回収は“カート方式”と呼ばれる方式を導入しています。
 増加の一途を辿るごみを問題視した東京大学は、1994年にごみの分別の徹底とリサイクルの推進によるごみの減量化を求める「東京大学ごみ宣言」を発表しました。その後、1996年には、さらなる分別の徹底と排出量の把握のため、「紙以外のごみ」を上記6種類に分別し、計量して収集するICタグ付きの“カート”による管理方式を導入しました。1999年にはキャンパス全域で導入され、以後現在も継続して実施されています。
大切なことは、排出者が自分たちのごみの量をきちんと把握することです。カート方式を導入したことで、ごみの量を実重量で把握することが可能になり、排出者の分別への意識と自分のごみに対する意識が高まりました。その結果、導入した1999年以降はごみの量、回収にかかるコストともおよそ半分になりました。
本郷地区キャンパスにおける、2012年度の一般廃棄物の発生量は652トン、このうち約6割がリサイクルされています。
各研究室には6種類の分別用の小さなごみ箱を用意し、いっぱいになるとカート集積所へ持っていきます。集積所は建物脇の倉庫内や、新しい建物では専用の部屋に設置されています。
集積所はおよそ50ヶ所あり、キャンパス地図にも記載されています。カートは1台800リットルが基本の大きさで、集積所1ヶ所に10台、本郷地区キャンパスだけでおよそ500台設置されています。可燃ごみは毎日、資源ごみについてはカートへの集積量の状況を見て回収しています。このカート方式、数万人規模の大規模事業場としては、東京大学が導入第1号でした。

画像:カート集積所内

カート集積所内

画像:カートに使用されるICタグ

カートに使用されるICタグ

適正な分別のための普及啓発や環境活動

冊子「環境安全」が年4回発行され、各研究室・生協に配布されます。ごみの分別については入学時のガイダンスや希望者を対象に月に1、2回の頻度で開催される環境安全講習会の中で指導と啓発を行っています。その中で使用済みPETボトルはキャップをとってラベルを外し、洗って排出して下さいと指導しています。また、留学生が多いことから、英語での講習会を年に2、3回開催するほか、パンフレットは必ず英語版と日本語版を用意しています。カートにも英語と日本語の表示があります。
理系の学生は研究室に所属すると、その研究室で分別について先輩から教わります。研究室に入る前の学部学生および研究室に所属しない文系の学生に対しては、環境安全研究センターや環境安全本部での教育が重要になります。近い将来、eラーニングで文系・理系にかかわらず全員が分別に関する教育を受けられる仕組みを設けることが今後の目標です。

<東京大学本郷地区キャンパス データ>

  • 面積:537,613㎡
  • 構成員:約3万人

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