8.ステークホルダーダイアログ2012

再利用市場拡大のために

~ 独自処理の円滑な引渡しおよび店頭回収の促進 ~

自主行動計画フォローアップ報告会

「ステークホルダーダイアログ2012」は2008年度の「年次報告書を読む会」から始まり、5回目の開催となります。今年度は昨年のテーマであった「再利用品の用途拡大・広報」と「PETボトルの国内循環量の確保」に続き、「再生利用市場の拡大」としました。まさしく循環型リサイクルといえる「ボトルtoボトル」(以下 BtoB)を進めていく上でも、使用済みPETボトルをいかにして国内で循環させるかが大きな課題です。
今回も各方面からのステークホルダーをお招きし、推進協議会の今後の活動に必要なご意見を頂戴しました。また、コーディネーターは自治体行政のご経験の深い廃棄物・3R研究財団の藤波調査部長にお願いし、まとめていただきました。以下に、出席者の皆さまからいただいたご意見の概要をご紹介します。

画像:藤波 博氏

藤波 博氏
コーディネーター
公益財団法人 廃棄物・3R研究財団
調査部長

本日は、テーマとして「再生利用市場拡大のために」、副題として「独自処理の円滑な引渡しおよび店頭回収の促進」ということで、これまでの歴史を振り返りながら、皆さまから忌憚のないご意見をいただくことができました。
まとめますと、「再生利用市場拡充」という面では、やはり自治体とどのように取り組むかが大きな課題であること。事業者サイドはB toBの市場導入を行いました。消費者、自治体では見える化としての広報活動の見直しが必要です。一方、「再生利用市場の量の安定化」という面では、自治体の独自処理について、容器包装リサイクル法の議論のなかで法制化の対応をどうするかが課題です。また、店頭回収も量的安定化の重要な要素となり得るものであり、製造者と流通の連携や関連する法制度の見直しが求められます。さらに、集団回収というものをいかに活用していくのかということも必要であると思います。

画像:鬼沢 良子氏

鬼沢 良子氏
NPO法人
持続可能な社会をつくる元気ネット
事務局長

私の在住している市では、一時期、回収PETボトルの独自処理を進めていましたが、私たち市民が資源回収に出しているものがまさか中国に渡っているなんて考えもしませんでした。しかし市では、自治体としての社会的責任と安定処理のため、国内処理に戻した経緯があります。これからは、市民が自治体に、「国内の貴重な資源として循環させていく必要がある」と言うべきであり、そういう動きを作って行くことが大切です。そのためにも回収PETボトルが何に循環しているかの“見える化” が、非常に大事であり、特にBtoBは消費者にとってより分り易い用途なので、チャンスだと思います。
資源の国内循環を進めていく上で、店頭回収は質の良い資源が回収されると言う点で貴重な場だと思います。それは消費者がボトルを必ずきれいにして、買い物ついでに店頭に持ち込んでいるからです。もっと促進するためにはインセンティブが有ると良いですね。私たちNPOの立場でも、このような流れを作っていけるよう積極的にかかわっていきたいと思います。

画像:古澤 栄一氏

古澤 栄一氏
廃PETボトル再商品化協議会
会長

回収された使用済みPETボトル60万トンのうち30万トン以上が海外に流出しています。これを何とか国内で循環させるためには、従来の主要用途であるシートや繊維に加えて、飲料容器や食品包材などあらたな高付加価値用途の開拓が必要でしたが、これまでは様々な課題があって国内需要を伸ばすことができませんでした。
飲料容器への再生利用であるBtoBはこれまでのケミカルリサイクルに加え、多くの関係者の努力で、昨年よりメカニカルリサイクルが本格的に稼働しました。今後、国内の循環マーケットが大きく広がる可能性があり、これにより海外流出の縮小に大きく貢献できるという期待を持っています。
容器包装リサイクル法は国民の全てが参加するとてもよくできた法律であり、この仕組みの下で、日本の使用済みPETボトルは高品質の回収資源となっています。これまでの再生利用品やメカニカルリサイクルBtoBに加え、さらに高度な商品に再利用されることにより、資源として世界でナンバーワンの価値のあることを証明していける時代が来ることを願っています。

画像:渡邊 健介氏

渡邊 健介氏
一般社団法人 全国清涼飲料工業会
技術部長

再生PETの新しい用途として、メカニカルBtoBが登場しました。使用済みPETボトルは回収までの履歴が不明なので、再生時の安全性の保証が課題でしたが、再生における汚染物質の除去など、厚生労働省が中心になって、ガイドラインを作成し、4月下旬から正式に運用されています。今後は、再生工場のラインごとに申請し、食品安全委員会で評価を受けたものが市場に出てきます。今はその過渡期で、ガイドラインの内容に則った安全性に加えて、官能適性が確認された製品が市場に出荷されており、再生PETボトルを理由とする苦情はまったくありません。
一方で、リサイクルのシステムが安定するためにはソースコントロールされた容リルートの回収PETボトルの増大が必要です。そのためには一般市民がリサイクルの内容などその商品を良く知り、自治体の独自処理ルートを容リルートに戻す流れを作っていただければと考えます。

画像:百瀬 則子氏

百瀬 則子氏
ユニー株式会社 環境社会貢献部長
日本チェーンストア協会 環境委員

ユニー株式会社では、多くの店舗で商品運搬の帰り便(リバース物流)を利用して、店頭回収のPETボトルを物流センターまで運んでいますが、法律の解釈・運用面での指摘もあり、全ての車両に産廃運搬許可を取りました。しかし、これが一般廃棄物であるとしても、県や市町村によって法の解釈がまちまちであるため、全店舗での対応ができていないのが実情です。
店頭回収を「ごみが捨てられている」とは思っていません。お客さまから「資源をお預かりしている」と認識しています。再利用品として、例えばPB商品やBtoBなどで、同じお客さまにもう一回買っていただくためにも、リサイクルルートを消費者の目に見える形にしていくことが重要と考えています。
小売業は動脈流通ではメーカーと消費者のつなぎ役ですが、静脈流通でも消費者とリサイクラーのつなぎ役となります。店頭回収は場所の提供を含め、公共サービスの側面が強いのですが、今後の小売業の取り組みの促進のためにも、法律などによるインセンティブを与えていただければと思います。

推進協議会からのコメント

本日はたくさんのご意見、ご指摘をいただきましたことに感謝申し上げます。このようにポイントを広く取った上で、今後の方向を絞り込んでいただきました。私どもの仕事の中には、二つの大事な視点があると考えてきました。一つ目は、再生利用製品の付加価値をできるだけ高めていくこと。二つ目は、リサイクルを行うプロセスをいかに合理的に維持していくのかです。付加価値の向上については鬼沢さまからのご指摘と渡邊さまからのご説明のごとく、安全・安心を確保した上でのメカニカルリサイクルによるBtoBを立ち上げることができました。しかし、百瀬さまがお話しされたようにその内容を的確に市民の方々に伝えて国内循環につなげていくことが重要な課題です。
リサイクルの安定化とはビジネスモデルを作り上げることといっても過言ではありません。そのための最大の要素はリサイクルに送り込める数量です。
再生利用市場はBtoBの開発・導入のように、明らかに、より一層の発展を求めています。それ故に私どもは、市町村の分別収集する30万トンのできるだけ多くが円滑に引渡され、その数量が安定的に確保されることを望んでいます。この点について、古澤さま、コーディネーターの藤波さまから多くの示唆に富むご指摘をいただきました。
以上の二つの視点が相互に影響し作用して、消費者と市町村の方々のご理解を深め、リサイクルの安定化が見えてくるものと願っております。

画像:会長 麦倉 誠

会長
麦倉 誠

画像:広報委員長 全国清涼飲料工業会 環境部長 櫻井 正人

広報委員長
全国清涼飲料工業会
環境部長
櫻井 正人

画像:専務理事 近藤 方人

専務理事
近藤 方人

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