第三者意見

画像:織 朱實氏(おり あけみ)関東学院大学法学部教授 法学博士

織 朱實氏(おり あけみ)
関東学院大学法学部教授 法学博士

環境法に係るリスクコミュニケーションを研究し、環境リスクマネジメント、リサイクル、廃棄物、化学物質に関する分野で活躍。環境省中央環境審議会専門委員、経済産業省産業構造審議会委員、文部省科学技術学術審議会専門委員などを務める。
〔著書〕
『環境リスクと環境法(米国編)』『環境リスクと環境法(欧州編)』(共著)、『よく分かる廃掃法、リサイクル法、容器包装リサイクル法』、『PRTRとは何か』(共同講演録)など

本年3月の大震災を契機に、私たちは「資源」「エネルギー」が生活の中に「当然にあるもの」から、「限られた」「貴重なもの」という現実に改めて直面させられました。「廃棄物」も、従来の「不要物」から貴重な「潜在的資源」として見直さなければならなくなり、ライフスタイルも、より資源を意識したものに変わっていかなければならなくなってきたのです。
日本の3R政策も、「限られた資源・エネルギーを有効活用していく」ために、Reduce、Reuseを中心に、Recycleについては、より高品質なリサイクルを求めていく方向に動いていくでしょう。PETボトルは、高品質のリサイクルに適した素材であることから、Reduce、Reuseの促進と同時にいかにリサイクルを安定的に進めていくかが重要です。本年度の年次報告書からは、こうした新しい変化に対応するPETボトルの3Rのあり方について、いくつかのポイントや課題を読み取ることができます。

より高品質なリサイクルに向けて

日本ほど分別が徹底され、家庭からきれいに排出されている国はありません。
昨年度の報告書では、こうした市民の努力により集められた高品質の潜在的資源が海外に流出することが、トピックスになっていました。今年度の報告書では、市町村からの指定法人以外の独自処理量が92000トンと昨年度より2%増加し、関係者間の「海外流出」への取り組みが功を奏してきているとはいえません。リサイクルシステムは、一度失われると再び作り出すことが非常に困難であることから、年次報告書にもあるように、「(指定法人への)円滑な引き渡しのさらなる促進」が重要なポイントでしょう。
回収資源としてのPETボトルは、繊維・シート・ボトル原料へのリサイクルに適しています。こうした素材の特性を生かした取り組みとして、今年度、国内で初めてメカニカルリサイクルによるボトルtoボトルの取り組みがはじめられたことが紹介されていることも、特記すべきことでしょう。

回収率の低下が意味すること

PETボトルの回収率が2008年の77.9%から、2009年には77.5%、2010年度は72.1%と下降し、第一次自主行動計画目標の75%を下回ってしまいました。数字だけ見ると、こんなにPETボトルの分別収集は普及しているのに?と不思議に思いますが、報告書を読み解いていくと、回収ルートが多様化することにより、捕捉しきれない数字や事業系の捕捉量がネックになっていることがわかります。
年次報告書では、この問題を解決するために、昨年度から貿易統計による輸出量と国内にとどまる回収PETボトルの実質的回収量に再資源化率をかけて算出する「リサイクル率」の概念を導入しています。きちんと捕捉できる数字で経年変化をみられることは、より課題が明らかになるので、望ましいのですが、容器包装リサイクル法対象容器の中でも、素材ごとに回収率やリサイクル率と、表示方法が混在しているのが気になります。
市民にとっては、自分たちの努力がどのようになっているのか分かりやすく示してもらうことは重要なので、よりわかりやすくするために、表示方法の統一は是非検討してほしい課題です。

軽量化への取り組み

PETボトルの「軽量化」は3Rのなかでも重要な取り組みですが、高齢化が進む中では「開けやすい容器」「つかみやすい容器」というニーズとのかかわりもあり、どこまで進められるか、個別の容器には限界もあります。
そうした中、PETボトルについては、今までの5年間の経験をいかし、新たにきめ細やかに目標設定がなされています。第一次自主行動計画では15容器で一律3%減であった目標を、2015年度目標では対象を17容器として、それぞれの容器特性(耐熱、耐圧、常温充填等)に応じて目標設定(3~20%減)しています。対象を拡大し、特性に応じた目標設定は、より効果的なReduceの取組として高く評価できると思います。

ステークホルダーダイアログ

本年度は、昨年のステークホルダーダイアログの意見をもとに、消費者のリサイクル製品に対する意識調査を実施し、それをもとに「PETボトル再利用品の用途拡大と広報」をテーマに議論が行われている点が特徴です。「回収から再利用までの工程の見える化」、「用途拡大はバランスのとれた需給関係が重要」、「国内循環の安定化のためには流通との協働体制も必要」といういずれも重要な指摘がなされています。来年度の報告書では、ダイアログで指摘された課題に、どのように協議会が応えていったかを見せてもらえるのが楽しみです。

(25)

TOP