9.ステークホルダーダイアログ2011

推進協議会の課題と広報について

─ PETボトル再利用品の用途拡大と広報、使用済みPETボトル国内循環量の確保 ─

2008年の「年次報告書を読む会」から始まり、今年で実質4回目となる「ステークホルダーダイアログ2011」を開催しました。各方面の皆様から、推進協議会の今後の活動に有益な示唆をいただくことを目的としています。
PETボトルの回収とリサイクルは、市民をはじめとする多くの方々にご協力いただき、回収時の品質が年々向上しています。しかし、その回収資源としての品質の高さゆえに海外需要がこれを求め、資源としての海外流出を引き起こしています。このような資源の流出は、これまで培ってきた国内のリサイクル基盤を崩壊させかねません。そのため今回は「再利用品の用途拡大と広報」そして「PETボトル国内循環量の確保」のふたつをテーマとしました。また今回のダイアログに先立ち、PETボトル再利用品に関する消費者アンケートを実施いたしました。
コーディネーターは、自治体からのご出席である、千葉県の高橋氏にお願いいたしました。以下に、出席者の皆様からいただいたご意見の概要をご紹介します。

画像:ステークホルダーダイアログ2011(2011年8月1日開催)

ステークホルダーダイアログ2011
(2011年8月1日開催)

画像:千葉県環境生活部資源循環推進課 副主査 高橋 崇暢氏

本日のテーマは「再利用品の用途拡大・広報」と「PETボトルの国内循環量の確保」です。自治体の立場から、また進行役ということで全体的な視点からお話しさせていただきます。
PETボトルは、中身・容器メーカーがリサイクルしやすい製品開発に尽力され、また受け皿となるリサイクル事業者の方々の努力もあって、消費者は分別しやすくなり、資源価値が高まることで自治体の分別収集の拡大が進みました。これは容器包装リサイクル法が目指した一つの理想形を体現していると理解しております。
しかし、資源価格の高騰は国外流出につながる独自処理の問題につながっています。独自処理する場合に市町村は、環境保全対策の確認と、住民への情報提供に努める必要がありますが、環境省等の調査によれば十分とは言えないようです。安定的な国内循環量の確保に向けては、独自処理の方が引取価格が高いという現実を超える理念が必要であり、自治体は国内循環の必要性と独自処理を継続するリスクや消費者への情報開示のあり方などを改めて考えることを求められています。関係主体が課題認識を共有することが連携の第一歩ですが、より多くの消費者が分別後の行方に関心を持ち、この問題を認識していただくことが特に重要ではないでしょうか。

画像:コーセーコスメポート株式会社 商品開発部 デザイン室 室長 山田 博子氏

消費者アンケートで感じるのは、再生PETは安いものに使えば生活者は納得するというイメージではないかと思いました。ですが当社では、以前から再生PETをたしかな「資源」と位置づけ、清潔さが求められる化粧品のパッケージに採用し、PETボトルリサイクル推奨マークを取得し表示しています。新入社員に応募動機を聞くと「商品に再生PETを活用するなど、社会貢献している会社なので働きたい」と答えるなど、消費者の方にも当社の方針がよく伝わっていると思います。また、カタログへの記載や株主様へも案内していますが、ネガティブではなくポジティブにご理解いただいているように感じます。
3.11の震災後は、生活者の方の意識に変化が見られ、企業側と使う側が相対するものではなく、地球人としてともに生きましょうというのが、これからのマーケティングだと考えています。エシカルコンシューマー(注:倫理的消費者)、環境保全や社会貢献といった商品の背景を知って購入する機運も高まっています。
海外流出防止につながる行動としては、テストマーケティングなどである地域を決め、「市町村と企業と地域社会が一体になって、地産地消のリサイクルに取り組み、成功したら水平展開するという動き」ができればいいと思います。

画像:NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット 事務局長 鬼沢 良子氏

「どういう広報をしたら良いのか」を、今回実施したアンケート結果をもとに具体化していくことが、課題解決の鍵になると思います。
PETボトルのリサイクルは「バージン材の投入が少なく済むリデュース」につながり、環境に良いという情報をきちんと伝えていく必要があります。
PETボトル再利用品=安価な製品という世間のイメージを脱却し、リサイクル材は良質な素材であることを周知していくべきです。例えば、誰もが知っているブランドの商品にPETボトル再利用品が使われていれば、大きな宣伝になります。アンケートでも、再利用品の使用はブランドのイメージを落とさないという結果が得られており、ブランドオーナーに対して再利用品の使用を積極的に働きかけていくことができるのではないでしょうか。
国内循環量の確保に関しては、独自処理で海外輸出等にまわしている市町村に、推進協議会が指定法人への円滑な引き渡しを求めるより、市民と地域のNPOが連携して行政に国内循環するように働きかけるほうが有効です。市民と地域のNPOに対してきちんとした情報とツールを提供していただき、回収されたPETボトルが本当に見える形の資源になっているというフローを「見える化」し、市民に理解してもらうことが必要だと思います。

画像:グリーン購入ネットワーク 専務理事 麹谷 和也氏

広報に関しては、私達の生活とPETボトルの国内リサイクルの係わりを、消費者に分かりやすくPRすることが重要です。3.11の震災を機に、消費者マインドが大きく変わる可能性があり、推進協議会には情報をタイムリーに発信し、消費行動の変革につなげてもらいたいと思います。
再利用品の拡大には、品質とコストのバランスが不可欠です。また、待ちの姿勢ではなく、もっと積極的に新しい市場(例えばおもちゃ市場)への利用を促すことも必要です。
国内循環量の確保に関しては、製造事業者・行政・消費者がお互いに価値観を共有し、ベクトルを合わせなければ、PETボトルの国内リサイクルシステムが抱える課題は解決しません。市町村の使用済みPETボトルの円滑な引き渡しをさらに促進させるためには、市町村の先進的取り組み事例等を紹介するにとどまらず、表彰制度等を新設し、市民に見える形で取り組みを促すことがあってもいいと思います。また、回収量を確保しリサイクルを推進していくことは、日本のリサイクル技術の革新につながります。そのためには、製造事業者・行政・消費者に加えて、流通事業者との連携が鍵になります。これらの成果を着実に積み上げていくことがPETボトルの海外流出防止にもつながっていくと思います。

画像:廃PETボトル再商品化協議会 事務局 中村 誠司氏

日本で分別排出するPETボトルは非常にきれいで、そのまま我々のところに届くようになればレベルの高い商品に再生できます。この「非常にきれいな分別排出PETボトル」は、消費者の皆様の努力と気遣いのたまものですから、日本国内できちんと無駄なく再生利用されるべきであり、そのようなリサイクル基盤が国内で整えられていることが周知されるべきです。広報的な取り組みの結果、市民の方から「きれいに出したPETボトルを、きれいなまま国内の再商品化事業者に渡してください」と地方自治体に要請できる仕組みのできることが、望ましいと思います。
再生材を活用した商品開発の課題として、例えばBtoB(飲料ボトルから飲料ボトルへのリユース的リサイクル)や高品質の繊維用途に使うような場合には、大口ユーザーへの製品供給となることが多くなります。原料としての廃PETボトルを相当量確保する必要が供給責任として発生するので、より安定的な国内循環の取り組みが求められるのです。
すべての再商品化事業者がそれを手がけるわけではないので、事業者間の格差等の問題があります。しかし、再商品化事業者の我々としては、石油由来と同等レベルの製品をつくるリサイクル材を目指し、CO2や使用する原油の量をできるだけ減らして、環境負荷を小さくすることを第一義に考えていこうと思っています。

推進協議会からのコメント

本日はありがとうございました。
自由闊達な議論の中で皆様からいただいたご指摘やご意見を、以下のように捉えました。

貴重なご指摘やご意見はとても語り尽くせませんが、皆様のご発言のひとつひとつを吟味させていただき、推進協議会の今後の活動に役立ててまいります。

推進協議会の出席者

画像:会長 麦倉 誠

会長
麦倉 誠

画像:副会長 公文正人

副会長
公文正人

画像:専務理事 近藤方人

専務理事
近藤方人

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