第三者意見

画像:織 朱實氏(おり あけみ)

田中 勝氏(たなか まさる)
岡山大学名誉教授・鳥取環境大学サステイナビリティ研究所所長

廃棄物の3Rの推進,適正処理の確保、資源循環のアジア地域への広がりや廃棄物マネジメントに関する国際協力の重要性がますます増大する中、アジア太平洋廃棄物専門家会議や廃棄物資源循環学会などの場を通して、国際的活動を行っている。
前、環境省の中央環境審議会廃棄物リサイクル部会長。
〔著書〕
「廃棄物学概論」(編集共著)、「循環型社会構築への戦略-21世紀の環境と都市代謝システムを考える」(編著)、「新・廃棄物学入門」(単著)、「医療廃棄物白書2007」(共著)、「循環型社会評価手法の基礎知識」(共著)、「循環型社会への処方凄一資源循環と廃棄物マネジメント-」(共著)、「ごみハンドブック」(編著)など 

今年のPETボトルリサイクル年次報告書は協会の活動を俯瞰して、貴重な情報が記述されています。これだけ、社会にとって有意義な活動の内容はもっと多くの人に知ってもらい高く評価されるべきと思います。それには、一般市民の感覚でわかるように、誤解を招かないような表現が重要です。また、活動の実績や今後への方向性の科学的根拠に基づくデータをはっきと示し、真実を伝えていくという姿勢が、読者の信頼感を築くことにつながるはずです。
また、年次報告書をより市民に読みやすく、分かりやすくしようと、毎年、紙面に新しい工夫を凝らしていることを高く評価したいと思います。中を見てみますと、文字やデータが多すぎるためにまだ読みにくさはあるものの、図表や、「専門用語・業界用語集」があるなど、市民に「理解してもらおう」という意気込みが感じられます。
少し辛口の意見となりますが、報告書を見て、「事業者は頑張っている」と伝えようとする気持ちはよくわかりますが、一方で、読者一人ひとりの“エコ・ライフ”にもつながる情報発信の面が必要と思います。「自分たちはこんな活動をしている」という情報発信だけではなくて、「あなたもこんなことを実行なさいませんか」というメッセージ性や、「私は協力したいのだけれども何をしたらいいの?」という問いかけに対する回答があるといいですね。
そのためにも、自治体や市民との膝を突き合わせての討論会や意見交換会の企画・実施の取り組みに期待します。 以下では報告書の中から、いくつかのポイントについて具体的にコメントをします。

(1)ボトル軽量化で樹脂量の削減を達成

リサイクルよりもまずはリデュースということで、PETボトルがどこまで軽量化できるかにも注目していました。報告書によれば、順調にPETボトルの軽量化が進められているようです。推進協議会では、自主行動計画でリデュースの目標値を「指定PETボトル全体で10%軽量化(2004年度比)」定めていますが、2012年度は指定PETボトル全体での軽量化は13.0%で、目標を2年連続で達成しています。軽量化による削減量は、行動計画値を3万5000トン上回る8万5000トンとなっています。これだけ数字が伸びた背景には、一昨年度の東日本大震災の際に増加し、市場に定着した2Lのミネラルウォーターが最も軽量化されているという事にも起因していると思います。また、PETボトルの樹脂量が、前年を2万1000トン下回ったことは、事業者の努力のみならず、PETボトルを購入した消費者の軽量化ボトル志向という購買行動の変化もあったものと思います。したがって、国民一致してリデュースに取り組んだ成果といえるでしょう。絶対値的にもリデュースが進んだということを評価したいと思います。

(2)「ボトルtoボトル」の進展

今年の大きなポイントは、ボトルtoボトルのメカニカルリサイクル手法が進展したことでしょう。2011年に、PETボトルのメカニカルリサイクルが実用化されました。ボトルtoボトルは、PETボトルのリサイクルの目指していたひとつの姿でありますが、消費者の安全・安心への関心が強いことから、国内市場への導入は難しいとされていました。それが実現された背景には、企業の技術力もさることながら、市民の徹底した分別排出、市町村の分別収集システムのもとで集められたPETボトルの品質が極めて高いということがあるでしょう。
一般的にリユースは、容器包装ではガラスびんが適していると思います。そのことを考えた上で、PETボトルの場合には、使用済みPETボトルを新たなPETボトルに生まれ変わらせ、それが国内循環システムの一翼を担っているということを、もっとアピールしてもいいのではないかと思います。

(3)使用済みPETボトルの高いリサイクル率

3R政策を立案し実施していくためには、回収量やリサイクル率の正確なデータが何よりも重要になってきます。報告書によれば、協議会は2011年度からこの課題に取り組み、調査精度向上のために調査対象リストの拡充に努めてきたそうです。調査対象となる回収業者を捕捉するために、産業廃棄物処理業の自治体の公開名簿などを網羅的に精査し、従来リストとの重複を整理しながら、2012年度には、さらに約800社へと対象リストを拡大することが可能になったとのこと。これにより、推進協調査に委ねられている事業系ルートの回収量は、昨年度と比較して4万5000トン上積みされています。調査精度の充実を図り、あわせて、リサイクル率も85%と目標を維持しています。
このリサイクル率は欧米と比べてきわめて高い数字です。今後とも多様な回収ルートによる回収量のより正確な把握に努め、分別排出を行う消費者、市民をはじめとする多くの関係者への広報に、努めてもらいたいと思います。

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